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「お疲れ様。明日も迎えにくるからね。」

僕はマンションの前までわさみんを送ってくると、手を振りながら駅の方を向こうとした。
最近出来る限り時間を取って、送り迎えをしながら話ををするようにしている。
ま、こういう所ならたとえファンに見られても、マネージャーとしての仕事だって言い逃れは出来るだろう。
時々わさみんが手をつなごうとか、腕を組んで、とか言い出すのは困るけど。

「ねぇ。たまには寄っていきません?お茶くらい…」
「ありがと。でも、まだ仕事残ってるから。事務所帰らなきゃ。」
「もう…なんか、ウチ寄ろうとするの避けてません?大丈夫ですよ~。
もうあんな事しませんから。」

僕は心の中を見透かされたみたいでドキッとした。
綺麗になったのは、さっしーだけじゃない。わさみんもだ…

「じゃ、行くから。」
「はい、じゃあ。ばいばい。」

僕は今度こそ駅に向かって歩き出した。

「へぇ~お前がなぁ。成長したもんだ。」
僕は驚いて声の方を向いた。竜也さんの声だ。

「竜也さん…なんで、こんなトコで…?」
「悪い悪い。でも、ちゃんと気を遣って二人の時には声かけなかったじゃないか。」
「ずっと…つけてたんですか?」
「人聞きの悪い事言うなよ。しかしなぁ。そうか…そうだったのか。」

今日の竜也さんはいつもと違う。この前もそうだった。
こんな風に勿体ぶった話し方をする人じゃなかった。

「まさか、あの時からもう目をつけてたのか?後で自分が食おうってか。
お前が女に対して、そんな器用な真似が出来るとは思ってなかったよ。俺以上じゃないのか?実は。」
「竜也さん…何言ってるんですか?意味がわからない。」

恍けてたんじゃない。僕は本当に竜也さんが何を言ってるのか分からなかった。
幾ら兄貴分だった人とはいえ、これ以上はさすがに僕も気分が悪い。
僕は竜也さんを睨みつけた。

「そんなに怒るなよ。冗談だよ。俺も分からなかったからさ。じゃあ、教えてやるよ。
宇賀神って…覚えてないか?鉄工所の…」

忘れる訳がない。宇賀神は、小さな鉄工所を経営していた男だ。
真面目で何の取り柄もない男だがそれが商売では災いした。
取引先に半ば騙されるように背負わされた負債を返すために借金地獄へ落ちた宇賀神は、
最後に僕らの闇金へ辿りついた。
恐らく、僕らが最後の希望…と思ったのだろう。当然僕らは、弱った獲物に善人ぶって近付く。
最後の希望なんてとんでもない。

宇賀神は自ら命を絶った。工場で首をつったのを見つけたのは僕だった。
僕は工場にあった手提げ金庫に残った千円札3枚すら取り立てた。
奥さんと娘が恨みを込めた目を向ける中、平然と。僕は言った。
「借りたものを返さないほうが悪いんだ」と。

「変わるもんだな。女ってのは。
あの時、女房は風呂に沈めたけど、お前がやめときましょうよって言うから娘はそのままにした。
ガキってのは結構高く捌けるんだぜ?まあ、こんな風に金の卵になってくれるとは思いもしなかったけどな。」


まさか…
あのときの女の子が…わさみん…なのか?


わさみんに、一生消えない十字架を背負わせたのは…






僕だ。



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