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ようやくわさみんのレーンが開く時間になった。
僕でも知ってるようなメンバー程ではないにしても、あっという間にかなりの列が出来た。
なんとなく並んで何となく流れに任せて進んでいった。
並んでる間、他のメンバーの列を見てるのも結構面白い。メンバーによってファン層が全然違うものなんだね。
わさみんの列は…なんか大人しそうな人が多いかな。ちょっと年齢層が高めのような気がする。

列が進むと、受付があった。握手券と受付票を身分証明書と一緒に係員に提出する。
別に悪い事をしてる訳ではないけど、免許証を出すのってどきっとする。
「前科一犯」とか書かれてるわけじゃないのに。
受付を過ぎるといよいよ、もうちょっとで握手出来る。やべ、マジでドキドキしてきちゃったよ。どうしよ…

ふと、僕の前に並んでる男がちょっと変な事に気が付いた。
まあ、色んなヤツがいるからな…って最初は思ってたけど、やっぱりなんか変だ。
ブツブツ独り言言ってるし第一目が据わってる。これからアイドルと握手するワクワク感がどこにもない。

右腕がコートの大きなポケットの中で落ち着きなく動いてるのがわかる。やっぱりおかしい。
ホールの中は空調と人いきれのせいで暑くて仕方なかった。
僕はユニクロで買ったダウンジャケットとセーターを脱いで薄手のシャツ一枚になってた。
それでも汗が額に浮かぶ程暑い。それなのに、こいつは分厚いフードまでついたコートを着てる。
昔とった杵柄…って事か。僕のアンテナが警告する。こいつはヤバいぞって。

「おぃ…」
僕は誰にも聞こえないよな小声で男の耳元で声をかけ、
右手がうごめいているそいつのポケットに手を突っ込んだ。

痛っ

ナイフだ。
僕は表情を変えずにポケットの中でそいつが持っているナイフを押さえた。
手のひらが切れて生温かい血が流れる。僕はそのままナイフの刃を握りしめた。
男は怯えたような表情になった。こういうヤツが一番ヤバいんだ。
逆上するようなヤツはビビって何も出来なくなる事が多い。でも、こういうヤツはダメだ。
周りが騒ぐと逆に冷静になってとんでもない事を面白くもなんともないような顔でやりやがる。

「いいから。ちょっと出るぞ。な?」
僕は表情を変えずに、静かにそいつに言った。
どうやら、まだドスは利いてたらしい。そいつは黙って頷いた。

「あ、お客様、受付を通られての退場は出来ません。券が無効になってしまいますが…」
係員が制止しようとする。
そうなの?券、ダメになっちゃうんだ。でも、今はそんな事言ってる場合じゃない。

「あ、すみません。構いません。お騒がせしちゃって…」
僕はポケットの中のナイフを握りしめたまま、そいつを開場の外まで引っ張っていった。

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