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第32節



「本当にいいの?なっちゃん。」
柏木が統轄室の立派な椅子に座って平嶋に聞く。
「うん。それより光栄だな。こんな大役を仰せつかるなんて。」
「でも、なっちゃんには本社のもっといいポジションを…」
「あれ?私はこれ以上ないほどやりがいのあるポジションだと思ってるけど。だって、もう一回あのワクワクとかイライラとかやったーって達成感とか。そんなのが味わえるなんて今からドキドキしちゃう。」
「そう言ってもらえると私も安心。」
「ま、ゆきりんとかまゆゆみたいなスターを一日でも早く育てるよ。」
「もう、何言ってるの。あ、あの子たちもお願いね。」
「ちょっと頭痛いけどね。でも、才加とたかみなも言ってた。もう一回ゼロからやらせるって。それでついて来れなかったら、かわいそうだけどその時は…」
「うん、それは仕方ないね。」

「でも、やっぱり優子さんやちゅりってスゴイね。研修生と一緒に飛び込み営業やってるって。たかみなさんも関心してた。あの二人はまたきっと這い上がってくるって。」

その時ドアがノックされた。
「失礼しま~す。」宮崎と北原、小森、近野、石田…第3営業所の若手メンバーが入ってくる。どの顔からも笑顔がこぼれる。

「あ、みんなお疲れ様~。忙しいところごめんね。今日来てもらったのは、他でもないんだ。新組織でのみんなの異動先が決まったの。」
「え?異動ですか?私たち、第3に残るんじゃないんですか?」
宮崎がちょっと意外そうな顔をする。
「うん。でもね、とってもいい話なんだ。」
柏木が笑いながら辞令の紙を取り出す。

「えっと、みゃ…宮崎美穂さん。それから北原里英さん、。あなた達2人には、福岡営業所開設準備室に行ってもらいます。えっと、ここの室長…つまり、初代営業所長はここにいる平嶋夏海さんね。」
2人の表情が一気に変わった。宮崎の顔も引きつっている。
「それから、石田晴香さんは第1営業所、近野莉菜さんは第2営業所に異動。」

「あの…柏木さん…?どういう事ですか?」
宮崎が引きつった笑いを浮かべながら聞く。
「うん、あのね、福岡は一からの立ちあげだから、しっかりしたメンバーに行ってもらって市場を開拓していって欲しいの。なっちゃんと浦野さんが昔第3を立ち上げたみたいにね。大丈夫でしょ?あなた達なら。あ、第1から大家さん、名古屋から中西さんにも行ってもらう事にしたから。」

「って、それって左遷じゃないですか!」
北原が我慢できないといった感じで声を上げた。
「左遷って。失礼じゃん?私に。」
平嶋が頬を膨らませて北原を睨む。

「柏木さん…大変失礼ですけど…あなたがその席に座ってるのは誰が活躍したか…ご存知ですか?実は…」宮崎が慇懃無礼な口調で言いかける。

「知ってるよ。」

「え…?」

「出てきていいよ、小森。」
会議室から小森の姿が現れた。
「こ…こもり…アンタ…スパイだったの?」
「ごめんなさい~。だって、だって…きゅーん…」
「小森、泣かないの。アンタが泣くとホント空気が和んじゃうんだから。」
平嶋が苦笑する。
「肝心の身内にはガードが甘かったみたいね。」
「でも…柏木さん。私たち、実際には何もしてないんです。何も…」
「だからダメなんでしょ。」
突然柏木の口調が強くなった。

「あなた、この1年何やってた?仕事に対して、本当に真剣に取り組んでた?何もしてないでしょ?変な政治力ばっか身につける事ばっか考えて。いい?仕事っていうのは、そんなに甘いものじゃない。机の上で絵空事ばっか書いて仕事した気でいたら大間違い。いい加減目を覚ましなさい。」
初めて聞く柏木の怒鳴り声に全員息をのんだ。

「頑張って戻ってきなさい。ちゃんと席は空けておくから。」
柏木が静かに言うと、宮崎はこくっと頷いた。
戻ってこれるだろうか?いや、戻ってこれるはずだ。宮崎も北原もこの世界で次のエースと噂されるまでの器だったのだから。石田にしても近野にしても、自分が育った環境でもう一回鍛えなおされればまだまだ大丈夫なはずだ。

「小森…アンタはもう一回鍛えなおしね。第3営業所長は私が兼任するんだから。
もう今まで見たく甘やかしたりしないよ~」
「はい…失礼しますぅ…きゅーん…」

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