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第26節

「お疲れ様です。玲奈さん。話しって何でしょうか?」
「あ、忙しいのにごめんね。ね、堅苦しい話し方やめようって事になってたじゃない?
二人なんだし。私も所長って呼ばないでちゅりって呼ぶから。」
「あ…うん。ごめんね。玲奈ちゃん。」
高柳が松井玲奈が待つホテルのバーに現れたのは深夜12時を回っていた。
玲奈の隣のスツールに腰を下ろす。
「何飲んでるの?」
「ソルティ・ドッグ。ちゅりは何にする?」
「私は、焼酎…はないよね?じゃ、バーボンのロックで。
あ、バーテンさんダブルでお願いね。」
「相変わらず酒豪だね~」
「最近、お酒の量増えちゃって…」

「ね?ちゅり…無理してない?」
「無理って?」
「うん…最近のちゅり、見てられない。」
「…」

玲奈が言いたい事は痛い程わかってる。この人はすごい。正々堂々と顧客に向き合っている。その姿は呆れるほど愚直で真摯で直向きで。今の名古屋の礎を作ったのは、間違いなくこの人だ。須田、大矢、向田、秦、木崎、木本…みんなこの人に憧れ、この人の対応を真似して成長していった。私はこの人に認められたかった。追い抜きたいとかそんなんじゃない。ただ、頑張ってるねって認めてもらいたかったんだ。

高柳はそんな思いをバーボンと一緒に喉に流し込んだ。
「おかわり。同じものをください。」
「ちゅり…そんな飲み方、身体に悪いって。」
「いいの。好きにさせて。」


「あのね…砂上の楼閣…って知ってる?」

「ん…?わかるけど…見かけは立派だけど、基礎がしっかりしてないから、脆く危ない虚構のお城…。玲奈ちゃん、なんとなく言いたい事はわかるよ。」

「そう…じゃ、これ以上は言わないね。」

「玲奈ちゃん。玲奈ちゃんはスゴイよ。私たちがしてる事なんてお構いなしで、正々堂々と自分のスタイルで売り上げを上げてる。それで毎月毎月全国トップクラスだもんね。到底かなわないや…。でもね、ここで私が…今さら退く訳にはいかないんだ。じゃないと、無理やりひきこんじゃった子たちに申し訳がたたないから。」

「ちゅり…その先に何があるの?」

「何だろ…?わからない。でも、きっと砂のお城じゃないって信じたい。
どうせ脆く崩れやすいなら雲の上までそびえるお城を作ってみせる。」

「すみません。私もバーボンをダブルで下さい。ストレートで。」

玲奈がバーテンに告げる。出てきたグラスを高柳のグラスに軽く合わせた。
「私は一緒に行けない。決して応援は出来ないけど…」

玲奈の言葉に高柳は頷いた。一筋の涙が頬を伝って落ちた。

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