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第24節

第24節

都内インテリジェンスビル。広い会議室を借りきってセミナーが開かれていた。
主催はAKB保険、大島優子個人だ。AKB保険の外交員は全員が個人事業主扱いになる。
販売拡大の為に個人でセミナーを開催する事が認められており、大島の最大の拡販ルートはこのセミナーによるものだった。大島を支援する顧客が大手・小口に係わらず新たしい見込み先をセミナーに連れてくる。大島はそこから顧客を獲得するという算段だ。営業所トップの売り上げを誇るこのセミナーには毎回応援として何人かの外交員が駆り出されていた。主に若手で勉強の為に…という主旨も含んでの事だ。

「あれ?板野さん。ひょっとして今日は板野さんも応援ですか?」
藤江が板野に声をかける。
「ううん。たまには見学。私、これでも向上心あるんだよ。」
板野が意味ありげに笑う。
「そうなんですか?…あ。いや、そういう意外とかそういう意味じゃなくて…」
「何慌ててるの?別に深い意味には取らないよ。ははは。それより、れいな、アンタ優子とすったもんだしてたんじゃないの?」
「あ、いえ。やっぱり優子さんってすごいと思うんです。
私も本気で仕事に取り組まないといけないなって思って…。
キャンペーンコンテストで2位になったからって甘く考えてたみたいです。」

「そっか。じゃ、私は一番後ろの席で見させてもらうよ。」
「はい。どうぞ。」
板野は藤江から資料を受け取り会場へ入った。

会場内は既にほぼ満席だった。毎回の事ながら大島のこの集客力には目を見張らされる。営業所長の秋元が挨拶に立ち、続いて大島が壇上に上がる。場内からは割れんばかりの拍手が沸き起こる。まるで、アイドルのコンサートだな。板野が苦笑した。

「それでは、お手元の資料、そして前方のスクリーンに投影した資料をもとにお話を進めさせて頂きます。」
大島が藤江に向かって小さく頷く。場内に資料をめくる音が起きた。
「まずは、最近の経済情勢から…」

大島は自分の手元の資料に視線を落としながら説明を始めた。すぐに異変に気づく。
何かがおかしい。何だろう?…会場がやけに騒がしい。
いつもは、私が話し始めると水を打ったように静まりかるのに…なに?このざわめきは?

ふと、藤江のほうを見る。全身が震えている。違う…違う…私じゃない…
必死に首を振っている。秋元も呆然とした表情で立ちあがっている。
会場のざわめきが大きくなる。大島はスクリーンに目をやる。
そこには、シティホテルのエントランスでスーツ姿の男と腕を組み笑顔を見せる大島の姿が大写しになっていた。大島が慌てて藤江を見る。それを見た藤江が慌てて手元のマウスをクリックする。次から次に男とのツーショットの写真が映し出される。藤江はその場にしゃがみこんでしまった。

大島が会場に配布された資料を手に取った。
「大島優子と一部顧客の不適切な関係について」
大きなフォントで打たれた文章は誹謗中傷に満ちていた。もちろん、大島には全く身に覚えのない事だ。写真だって、一人の時じゃない。隣には秋元だって、板野だって宮澤だっていたはずだ。巧妙に修正されたものだ。そう言いたかった。しかし、その言葉は会場から沸き起こった怒号にかき消されてしまった。

その様子を、板野は一番後ろの席で薄ら笑いを浮かべて見ていた。

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