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chapter-13


長期に渡って上演されつづけてきた現公演の千秋楽がやってきた。
各チームの公演が一つずつ終わり、今日はシアターの女神公演の最終日だ。
AKBを卒業したJPNメンバーも集まり、オリジナルの旧Bメンバー全員が揃った。
佐藤亜美菜や増田有華が柏木を気遣うように声をかける。
「ね、ゆきりん。気にする事ないよ。運営がどんな考えかしらないけど、ゆきりんには
ファンがしっかり付いてるんだから。」
「ゆきりんはさ、早くこっちに来たらええねん。あっちゃんも優子もそう言っとったで。」
「ありがとう、でも、大丈夫。今度のアンダーガールズ、とってもいいチームなんだよ。
早く曲が出来上がらないかなって楽しみなんだ。」柏木は屈託のない笑顔を二人に向ける。
「ゆきりん…アンタって子は…」増田が目を潤ました。

「え~いいか。今日の公演だが…」戸賀崎がメンバーに声をかける。
「フルメンバーなのでポジションは通常パターンで。ただし…」
一瞬柏木の方に視線をやって戸賀崎が言葉を続ける。
「夜風は…増田に演ってもらう。」

「ちょっと待ちいな。戸賀崎さん、それはあんまりや!」増田が声を荒らげる。
平嶋も佐藤も渡辺も刺すような視線を戸賀崎に向ける。険悪な空気が湧きおこった。
「夜風の仕業」は柏木にとって、公演で与えられた初めてのソロ曲である。それだけ思い入れも強かった。自らが休演する事やアンダーとして歌っていた奥真奈美の卒業公演の時、そして数回のシャッフル公演の時以外、この曲を他のメンバーが演る事は決してなかった。

柏木以外のメンバー全員が戸賀崎と睨みあう形で対峙した。戸賀崎も困惑した表情を隠さない。公演までもうあと30分を切っていた。
「ね?みんな。今日は千秋楽だよ。私はいいから。これまでチームBがずっと頑張ってきたシアターの女神公演だよ。このメンバーで出来るのは最後かもしれないんだよ。ね?だから…」
「ゆきりん!ダメだって。ゆきりんが幾らそう言っても私は許せない!」
宮崎美穂が叫ぶ。目からは大粒の涙がこぼれる。
「みゃお!」突然柏木が大きな声を出した。
「いい?演るの!ここは大切な場所なんだから。私個人の事なんてどうでもいいことなの。この場所ではどんな事があっても笑顔で立ってなきゃだめなの。お願い。みんな。私の…最後の…最後のキャプテンとしての指示です。みんな、全力で今日の公演を演りとげましょう。さ、円陣組むよ!」

千秋楽のステージは素晴らしいものだった。メンバーは最後まで全力で、そして笑顔でパフォーマンスを披露した。満員ファンにもその思いが伝ったのだろう、ステージと一体になった盛り上がりは恐らく劇場公演史上最高のものであった。事実、この日のステージへはネット上で公演レポを上げる某サイトでも絶賛された。「この熱意あるメンバーそして観客と同じ時間を共有できた事は自分にとって一生誇れる事である」と。

ダブルアンコールが終わっても観客から拍手が途絶える事はなかった。
「僕らの紙飛行機」で柏木が投げた紙飛行機にはたった一言「一生アイドル」と書いてあった。その力強い字でメッセージがしたためられた紙飛行機を手にした少女が、純真な瞳を見開いていつまでもアンコールの声を続けていた。

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