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chapter-6


「おはよう。1位おめでとう。テレビで見ましたよ。」
マンションのエレベータで一人の紳士が話しかけてきた。長身で細身のスーツを着こなしていて
頭に白いものが混じってはいたが、その笑顔には爽やかさがあった。
年の頃は初老といったところだろうか。柏木がこのマンションに引っ越してきてから
よく顔を合わせては気軽に挨拶を交わすようになっていた男だった。
「ありがとうございます。」柏木は笑顔を返した。
マンションのエントランス前まで来た時、柏木の携帯が鳴った。
「はい。柏木です。え…?そうなんですか?…えぇと…とりあえずわかりました。
う~ん…困ったなぁ。」電話を切った柏木は独り言のようにつぶやいた。

「どうされました?」紳士が訪ねてきた。
「あ、いえ、ちょっとお迎えの車がトラブルで来れなくなっちゃって。
ここってタクシー呼べばすぐ来てくれますかねぇ?」
「それはお困りでしょう。宜しかったらお送りしましょうか。私も迎えの車を寄こしております。」
紳士がにこやかにエントランスの方を指差す。黒塗りのセダンが車寄せに入ってきた。
「いえ…そんなご迷惑は…」
「ああ、これは失礼。どこの輩かわからない男の車にはトップアイドルとしては軽々しく
乗るわけにはいきませんな。私、実はこういう者です。」
男が名刺入れから名刺を取り出した。四隅までぴしっとした切れるような名刺だった。
「衆議院議員…国生剛…さん。え?国会議員の先生だったんですか?」
「ええ。柏木さんのご出身の鹿児島選挙区選出ですよ。ご挨拶が遅れてしまいました。」
「いえ、私こそ…すみません。なんか失礼な態度取っちゃってたかも…」
「あははは。そんな事はありませんよ。いかがでしょう?お急ぎでは?」
「あ…すみません。新幹線の時間が迫ってて。お言葉に甘えてもよろしいんでしょうか?」
「構いませんよ。そうそう、今回の総選挙、実は私の秘書はみんなあなたに投票したようです。
来る国政選挙ではぜひ私に投票頂けるとありがたいですね。おっと、こんな事を言っては
選挙違反になってしまう。」国生は涼やかに笑った。
「では、どうぞ。先に東京駅までやらせましょう。議員会館へはその後で構いません。」
「ありがとうございます。では、宜しくお願いします。」
柏木は国生のあとに続いてセダンに乗り込んだ。

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