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71.

熊崎晴香、込山榛香、そして内山奈月。
三人の先頭争いは5キロ以上に渡って続いていた。
めまぐるしく先頭が変わる。駆け引きなんかじゃない。
三人の意地とプライドが激しくぶつかりあっていた。

実況のアナウンサーのテンションは復路開始早々のこの時点で早くもクライマックスに達しているかのようだった。

「先頭が小涌谷の踏切をを通過します。前に栄京の熊崎。その後ろに聖ヴィーナスの内山。あっと、ここで込山が、四ツ谷大の込山が前に出た!そして…ああっと、ここでまた後ろを振り返る。そして…笑いました。何度このシーンが繰り返されてるのでしょうか?まるで、挑発するように。抜き返してみろ!まだまだこの戦いは終わらない。まるでお互いが火花を散らしあうように。あーっ今度は内山だ。内山が…前の熊崎を押しのけるかのように込山に並んだ。内山も笑っている。しかし…その笑顔は余裕の笑顔では決してありません!そして…そして…5区の中間点の通過タイムが…」

絶叫調のアナウンサーが一瞬言葉を詰まらせた。
プロとしてはいかがなものだが、それが事の大事さを強調させた。

「6区の区間記録。あの『山の妖精』栄京女子大・須田亜香里が打ち立てた前人未踏の区間記録を、なんと1分半。中間点で1分半も上回っています。このスピードは脅威だ。脅威のスピードで山を下る先頭。果たして、このままの勢いでこの先進むことができるのか?」

興奮しているのは実況だけではなかった。監督車からひっきりなしに声が飛ぶ。もう怒号に近いものだった。最初は峯岸と玲奈の熱くなっている様をにこやかに眺めていた助手席の倉持も、もうすっかり顔を赤くしている。身を車から乗り出さんとしながら内山に声をかけていた。

もちろん、走ってる本人達の中にも熱いものが燃え盛っていた。
「ブレーン」としては冷静な内山の何かに取り付かれたような走りはもちろん、熊崎も込山も。


聖ヴィーナスに進んだ大和田南那、同じチームの向井地美音。エース区間の2区を走った大和田、裏エース区間とされる9区を任されている向井地。二人の四ツ谷大付属高の同窓生に比べ、込山の評価は最初決して高くなかった。
飄々とした走りながらも圧倒的な速さを見せる大和田。2区で見事な走りを見せた事で元秋英の前田敦子2世と呼ばれるようになっていた。向井地も小柄ながらパワフルな走りで大島優子2世の呼び声が高い。
込山はずっと焦っていた。トラックでもロードでも…なかなか二人との差は埋まらない。小さな大会では実績を見せてはいたし、「クセ者」として強豪四ツ谷大の6区を任されている。
それでも、自分はこのチームに必要とされているのだろうか?

居場所が欲しかった。チームの中でって意味ではない。
四ツ谷大の環境は最高だ。湯浅さんも峯岸さんも熱くて大好き。
先輩だって同級生だって競い合って強くなるって環境は私が望んだものだ。
「こみはるっていったら何々だよね」そんな風にいわれる何かが欲しかった。
内山さん、熊崎さん…こうして走ってるとわかる。
きっと、私たち三人って似てるんだ。こうやって大歓声を浴びると力がわいてくる。
沿道から自分の名前が呼ばれると、気持ちが高ぶってくる。
一歩一歩…路面からの衝撃を受けるたびに、こんちくしょう、負けるかって気になってくる。

こんな楽しいの初めてだ。
こんなに負けたくないって思ったのも。

このまま…このままずっと三人で走ってられたらな。


ちょうど三人が横一線に並んだ。真ん中の込山が両脇の二人に笑顔を送る。
熊崎が、内山が…笑顔を返した。

「ねえ、そろそろケリをつけなきゃいけないんじゃない?」
「ですね。でも内山さん、もう限界って顔してますよ?」
「だめだめ、熊ちゃん。それがきっとこの人の手なんだから。」
「そっか。騙されるとこだった。」
実際に言葉にしたわけじゃない。
そんな余裕は三人にはもう残っていなかった。
それでも、会話は成り立っていた。三人の気持ちがシンクロしていく。

大平台のヘアピンが近づく。外側を回り込むようにして走ってきた復路よりもアールの小さなカーブを最高速までスピードの乗った三人がカーブに飛び込んでいく。

カーブの最中に三人は同時に右斜め上に視線を走らせた。そして、同じ光景を共有した。
区間新を大幅に更新するかというハイペースで走る三人を遥かに上回るスピード。

乃木坂大の齋藤飛鳥の姿があった。

72. | Home | 70.

Comment

急なコメント失礼いたします。
四谷さんの小説、毎日楽しく小説を拝見させてもらっています。
実は更新されたりすると正直嬉しかったです(笑)
読んでいると物語のところどころに時事ネタを絡めてくるので、おもわずニヤリとしてしまったりしてます(笑)
上手く文がまとまらなくて、なんかすいません(ー ー;)

最後になりますが、最近は寒くなってきたので、お身体を崩されなさいませぬようお気をつけてください。
ずっと応援してます(^o^)
失礼いたしますm(_ _)m

2014.10.29 (Wed) | スマグラー #- | URL | Edit

No title

>>スマグラーさん

コメントありがとうございます。
こうしてコメントして頂けることは何より嬉しいことなので大歓迎ですよ~
これからもよろしくお願いしますね。

時事ネタはこそーりと入れるほうがさりげなくていいのでしょうが…でも、そこに着目してくださるのは嬉しい限りなんです。

2014.10.29 (Wed) | 四谷 #mQop/nM. | URL | Edit

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