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「どういう心境の変化だ?いったい、誰に狙いを定めた?」
「あ?どういう意味だ?」
司馬がこんな風に勿体ぶった言い方をするときは、何かしら魂胆がある時だ。
「お前のいつもの手口じゃないか。まあ、確かに百何万円分の花が匿名で届けば、運営も受け取るしかないわな。」
なんだ?
なんでばれてるんだ?
そりゃ、狙った獲物に近づくためには、幾つかの必勝法がある。
そんな事はいい。問題は、なぜ大量の花が届いた事を司馬が知っているかだ。

「ちょっとした話題になってるぜ?」
司馬がタブレットの画面を俺のほうに向ける。
劇場のロビーに飾られた薔薇の花の前、満面の笑顔で写真に収まるメンバーたちだ。
「こんな写真を誰が公開してるんだ?」
「誰って、そりゃメンバー自身さ。知らないのか、ブログとかぐぐたすとか。今は、アイドルも情報発信する時代なんだよ。」
「しかしなあ。合いも変わらず紫の薔薇か?で?言えよ。誰なんだよ?お前の事だから、どうせ高校生あたりのメンバーだろう?まさか、なんなんじゃないだろうな?あ?奈和か?まさか、なるちゃんとか言うなよ?さすがに中学生は引くぞ?」

まったく口の減らないオトコだ。
しかし、なぜだろう。無性に本音を話してしまいたい衝動に駆られてしまうのは。
カミングアウト…

「玲奈だよ。松井玲奈。」
「は?玲奈だ?マジで言ってるのか?お前、処女にしか興味ないんじゃないのか?」
「ああ。そうだよ。まさに、その通りじゃないか。」
「そうか…そりゃ、いつもいつもヤラれたって言ってるもんな。お前、ホントに女を見る目がないからな。やめとけ、玲奈は。ありゃ、実際のところは女豹だぜ?」
「いや、俺はそう思えなかった。あの、透明感はただごとじゃないぞ?」

司馬が応接のソファに深く腰を下ろした。
「透明感ね…まあ、確かにあの日の玲奈は凄かった。っていうか、最近、結構また評判がいいな。特にライブのステージでの評判がな。あ、そういや、進藤が何か言ってたなあ。」
「進藤先生が?」
「おい、何で俺の事は呼び捨てで、進藤の事は先生なんだよ?」
「いまさら、二人のときにお前の事、先生なんて呼べるかよ。で、進藤先生は何だって?」

「なんかな、どこか内臓に問題あるんじゃないかって言ってたな。ありゃ、透明感とかじゃない。病的な美貌だって。なんか、当たるんだよな。アイツの見立てって。伊達に救命救急の第一人者って評価とってないよな。」
「病的だと?しかし、あれだけの人気者だ。しっかりと健康管理体制だって取ってあるだろう?」
「そう思うか?」

そう言って司馬はほくそ笑んだような顔を俺に向けた。

「どういう意味だ?」
「いや、あそこな、メンバーの定期健康診断とか、診察とかを引き受けてる病院があるんだよ。」
「まあ、それくらいはあるだろうな。」
「そこさ、俺の後輩が跡を継いだ総合病院なんだよ。まあ、町医者に毛が生えた程度だけどな。」
「へえ。」
「へえ…じゃないよ。どうだ?玲奈に近づくきっかけくらいは掴めるかもしれないぜ?」

そういう意味か。
まったく抜け目のない男だ。

「お前の好きな子にも近づけるじゃないか。」
「それがな。残念ながら、俺の推しは健康そのものでな。」
「それで?幾ら欲しいんだ?」
「コレかな?」
司馬が指を1本出した。

「ったく。十分な給料払ってるじゃないか。」
「おいおい、裏の仕事の手当て分は入ってないぜ?」
「仕方ないな。源泉徴収なんてされない金がいいんだよな?」
「もちろん。」
俺は、キャビネットを空けて中の金庫のダイヤルを回す。
中には、現金の束があった。
奥から先日、秋元康から受け取ったダルマをひとつ取り出す。

「ほらよ。もってけ。」
「ちょ…ちょっと待てよ。1本って100万のつもりで言ったんだぜ?1000万かよ?」
「いいから持ってけって。」
「怖いなあ。代わりに何しろって言われるんだよ?」

俺は金庫を閉じながら司馬に言った。
「玲奈の健康診断のデータを持って来い。進藤先生の見立ては、俺も信用している。きっと何かを抱えてステージに上がってるんだろう。」
「なんだ、そんな事で1000万ももらっていいのか?」

司馬が不敵に微笑んだ。

「ああ。安いもんだ。頼むぞ。」

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