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「もうやめよう。今日はコレで終わりにしようよ。黙りこくっちゃう位なら、それぞれレッスンでもした方が全然いいし。ね?お疲れ!」

長い沈黙に耐えかねたように、梅本まどかが口を開いた。
照明が落とされた劇場のステージの上。みな、下を向いたままで座って円になっていたメンバーが、少しほっとしたような表情でそれぞれ顔を見合わせる。

「いや、Eはそういう所がダメだって言われてるんじゃないかと思う。なあなあで終わるなんてSじゃ許されない事だったよ?」
木下有希子が、横に座っていた梅本が腰を浮かしかけるのを制するように言う。
長い髪はまだ汗で濡れている。首にかけたタオルで汗に濡れた顔を拭った。

「そうですよね…やっぱり、私達に何かが足りないからスタッフさんも厳しい意見を下さるんだと思うし。やっぱり、早くSやKIIに追いつく為にも…」
菅なな子が木下の言葉を引き継ぐように言った。普段の声のトーンよりはかなり低い感じだ。
アンタも何か言いなさいよ…そんな風に木下の目が言っているような気がしたのだ。

「そんなに悪い公演してないと思うんだけどなぁ。今日だって、お客さんすごく盛り上がってたし。」
「うんうん。私もそー思う。梅本さんの言うとおり、今日はもう帰り…」
岩永亞美が遠慮がちに発言した後、市野成美がすっくとその場に立ちあがった。
しかし、木下の刺すような視線に気づき、すぐその場に腰を下ろす。

「杏実。アンタはどう思うの?奈和。アンタは?」
木下の表情は厳しいままだ。

「私は…ゆっこさんの言う通りだと…」
「杏実、言いたい事いいなよ。いつも言ってるじゃない?私達は私達なりに一生懸命やってるし、確かに成長できてる自信があるって。ゆっこさん、私も同じ考えです。何もSさんやKIIさんと同じである必要はないと思います。それに…スタッフさんもちょっと…だと思います。厳しく怒られるのって、玲奈さんとか花音さんがいない時ばっかじゃないですか。最初から偏見もって見てるんですよ。今日だって、杏実のセンターはスゴク良かったと思う。玲奈さんがいない事多いけど、玲奈さんがいないだけで最初から減点して見られてるだけだと、私は思いますけど。」

古畑奈和の言葉には、少し苛だちのようなものが感じられた。
「Eはいつまでたってもお荷物チーム」
そんな風に言われる事が、許せなかった。
パフォーマンスで劣ってるのなら、それも甘んじて受けとめよう。
MCが相変わらずダメだって言われてるのも、もちろん知っている。でも、それだって、少しずつ良くなってきてるはずだ。第一、エリートが揃ったSに、ベテラン中心で経験豊富なKIIと比べる事自体、間違ってる。次世代を引っ張る事を意識すればするほど、先輩の壁の高さを実感する。だったら…私達は私達のやり方で壁を超えるべきなんじゃないだろうか?

「ゆっこさんは、どこがいったいダメだって言うんですか?Sと違うって言うなら、具体的に言ってくれればいいでしょ?」
「ちょ…ちょっとめいめい…」
酒井萌衣のぶっきらぼうな口調に、梅本がオロオロしていた。
当の酒井本人は、涼しい顔だ。
「どこがって…そりゃ、一人ひとりがね…」

木下はそう言いながらも、実は同じような思いを持っていた。
焦りもあったのだろう。
研究生からほぼ同時に旧チームSに昇格した同期の三人。
いきなり場違いなステージに引き上げられた…あの時はそう思ったものだ。
先輩は鬼としか思えなかった。ステップがほんの半歩、ターンが僅か一瞬遅れるだけで、すぐにストップがかかり、全員で同じ場所を繰り返し踊る。何度も何度も何度も何度も…

ちっ…

誰かが聞こえるように舌打ちをする。

はぁ…

ため息ってそんな大きくつくものんだっけ?

「なんで、この子達なのよ?2期の子でいいじゃないのよ」
そんなセリフは何度聞いた事か。

そんな悔しい思いを、ひたすら三人で耐え続けた。
そして、乗り越えてきた。

「アンタ達がおってくれて、良かったき。」
鬼と思っていた先輩にそう言われて、三人で流した涙は今でも忘れない。

ゆりあはSに残った。
珠理奈さんがいない時には、堂々とセンターを務める事も多い。
キラキラ輝いている。
そして、実は誰よりも悩み、そして戦っている。
間違いない。今やSのエースは木崎ゆりあだ。

あかりんは、KIIに行くって決まった時、真剣に怒っていた。
なんで?なんで?
そう何度も言って…そして、真剣に泣いた。
でも、その悔しさを見事に晴らしている。
あの子はスゴイ。本当にスゴイ。
どんな時でも、自分の力だけで道を開いてきた。
KIIを…いや、SKE48をこれから引っ張っていくのは、須田亜香里なのかもしれない。

私は?
私はどうなんだろう?

選挙でも結果を出せなかった。
選抜にだって、もう呼ばれる事がないのかもしれない。

チームが悪いんじゃない。
あの二人に比べて、何の輝きを放つ事が出来ていない、自分自身にいら立ってるだけなのかもしれない…


「本音を言っていいですか?」
古畑が思い詰めたような顔で立ち上がった。
「もちろん。奈和。奈和なら、このチームEをどうしたい?」

「玲奈さん…だと思います。玲奈さんがいると、いつまでたってもチームEが評価される事はないと思います。」
「奈和…アンタ…ちょ…」
菅が立ちあがって古畑の肩を押さえるようにした。
古畑がその手を柔らかく振りほどく。
「そう思ってるのは、私だけじゃないと思います。なな子…アンタもでしょ?杏実も、つぅも。」
古畑に名前を呼ばれた5期の面々は下を向いたままだ。
一旦は止めに入った菅も、古畑の言葉を真っ向から否定しようとしない。

「奈和…玲奈さんは、仕方ないよ。ああやって、外仕事を頑張ってくれてるから、私達SKEも…」
「そんな事はわかっています。私だって、玲奈さんには頑張って欲しいし、玲奈さんの事を心から尊敬しています。優しいし、私達の事をとっても良く考えてくれてる事もわかってます。でも…ゆっこさんも、気付いてるんじゃないですか?玲奈さんがいる事で…」

木下も黙りこんだ。
言い返した方がいいのだろうか?
玲奈はチームEのリーダーだ。
SKE48の顔だ。
先輩の事を言うに事欠いて「いないほうがいい」などと言うのを許しておいていいのだろうか?

考えがまとまらないまま、時間がどんどん流れていく。


多分、私も、心のどこかで奈和と同じ事を考えていたんだろう…


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