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「秋元先生。こちらへどうぞ。大蔵もついてきなさい。」
Jr.がオペレーションルームを見渡す部屋へと二人を導く。
ガラス張りの部屋からは、広大なエリアの先まで見渡す事ができる。

「壮観ですね。確かに、ここから眺めてると、世界をこの手で握っているかのような錯覚を覚えるのもやむをえませんね。」
「錯覚?大蔵、それは違うよ。錯覚などではない。事実だ。」
「そう思っていられるのも、今のうちですよ?」

「秋元先生。もう宜しいでしょう?お芝居はその辺りで。」
「お芝居…?何を言っているのか、わから…」

「大方、中に入ってこの施設ごと破壊する事でも考えていたのでしょう?随分、乱暴な作戦だ。」
「くっ…読まれてたのか…」
大蔵が苦い顔でJr.を睨む。
「読んだのは私ではないがね。優れたシナリオライターは、シュミレーション能力にも長けているものだ。」
「先生…こうなったら仕方ない。今…今すぐ、そのボタンを…」
大蔵の言葉に、秋元が胸元から起爆装置を取りだした。
大きく息をのむ。

「ほう。それですか?それが、最終兵器という訳ですね。およしなさい。今、そのボタンを押せば、どうなるか位は聞いているんでしょう?そもそも、彼が救いたいのは、誰なのかを考えてみるといい。」
「先生…仕方ありません。先生…」

長い沈黙があった。
秋元は、起爆装置を足元に落とした。

「私には…出来ない…」


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「また君とこうして話が出来るとは思っていなかった。さすがは、SSクラス。簡単にはいかないね。」
僕の見ていたモニターにJr.の顔が突然現れた。
後ろには、秋元先生と大蔵さんが、椅子に座らされているのが見える。銃を突きつけられている。

失敗したのか…
僕は唇を噛んだ。

「ここまで私を苦しめてくれたお礼をさせてもらおうじゃないか。どうかな?こちらへご招待しようじゃないか。しかし、その時は私の敵としてではない。君の勇敢さと優秀さに最大の敬意を払いたい。君がメンバーを思う気持ちも良くわかった。どうだ?君が、こちらに来るというのなら、彼女たちを解放しようじゃないか。君には、新しいプロジェクトを発案してもらい、それを運営してもらえればいい。どうかな?ウィン・ウィンの関係というヤツだよ。君のその才能はもっと活かされるべきだ。」

「罠や。絶対に乗ったらアカン。」
「そうよ…そんな条件…きっと…」
今出サンと玲奈が止めてくれる。
確かにそうだろう…
しかし、今僕がアソコにいかなくては。このままでは、本当にゲームセットだ。

「わかり…ました。でも…本当に。彼女たちを解放してくれるんですね?」
「もちろんだ。」

僕は静かに立ちあがった。
無力感が僕を支配する。

「そんなのウソに決まってるよ~。」
突然、緊迫した場の空気をひっくり返すような明るい声が割り込んできた。
モニターいっぱいに太陽のような…ヒマワリのような笑顔が映し出される。

「ゆ…ゆりあ?どうして…どうして君が?」
「は~い。いつも心にぴーす。アナタの心にぃ~?」
「ゆりあ…君がなぜ?」
僕は驚きを隠せなかった。
「もう~。そこは、ゆりあぴーすって返してくれなきゃ。」

「木崎くん。そこでいったい何をしてるのかな?」
「あ、ゴメンなさい。なかなか上手くいかなくって。せっかく中に入れたんだから、ちゃんと宿題しなきゃって思ってたら…遅くなっちゃった。何とかそっちに話しかけれるようには出来たみたいだから、間違ってはなかったのかな。」
Jr.の呼びかけをほぼ無視する形で、ゆりあが僕に話しかけてきた。

「ゴメンね。騙したみたいな事して。きっと、あなたがこの中に入るのって無理じゃないかって思って。だから…あいりんさんのシナリオに乗っかってれば、少なくともこの中には入れるんじゃないかなって。そこまでは正解だったんだけどなぁ。」
ゆりあの手のひらには、起爆装置が握られていた。
僕が最初に作って、ゆりあに見せたものだ。

「これを押す前にやらなきゃいけない事…あるんでしょ?アナタが言ってる事を思い出して何とかやってみた。正解かどうかわからないけど…でも…やっぱり、私バカだから…どうしても最後のトコが理解できないみたい。でも…もう時間がないみたいだから。」
「ゆりあ…ダメだ。それを今、押しちゃ。確かにシステムは破壊される。しかし…そのままじゃダメだ。君が…起動装置を押した者はモロにその衝撃を受ける。きちんと、シールドしなくちゃ…」

そうだ。だから、その起爆装置は僕が押さなくてはならなかった。
秋元先生に託したのも同じ理由だ。洗脳を受け、外科的処置を施されていない人間が押す必要がある。
ゆりあが押すなら、彼女自身をプロテクトする作業をしなくてはならない。

ゆりあは僕の方をじっと見た。
そして笑顔を向ける。僕の大好きな笑顔だ。

「私…アナタの事が大好き。嘘じゃないよ。アナタに出会ってから、人を好きになるって事がこんなにも素敵な事だって教わったの。知ってる?私が最初にアナタの事が気になり始めた頃の事って。とっても、笑顔が素敵だった。額に汗とかかいちゃってね。握手会で、ファン一人の事なんて覚えてるのかって?覚えてるよ。ちゃ~んと。そんでね…その中の人に恋心を抱いちゃう事だって…本当にあるんだよ。だから…幸せだったなぁ。アナタと一緒にいれた時間が。とっても。一つだけ残念だったのは、アナタを騙しちゃったようになっちゃった事。あ~出来れば、もっと普通に会って普通に恋したかったなぁ…」

「ゆりあ…ダメだ。大丈夫。僕が必ず…必ずそっちに行くから。ね?待ってて?」
「あの人の言う事、絶対に信じちゃダメ。私、知ってるんだ。あの人は、絶対にアナタの事を生かしてはおかないと思う。だから…」

ゆりあ…ダメだ。
僕は、それ以上言葉にする事が出来なかった。

「ゆりあ…いいんだね?」
「あ、玲奈さん。良かった。無事だったんですね。」
「本当に?本当にいいの?」
「大丈夫ですって。私、なんの心配もしてませんから。」


その時、ゆりあの周りに人の影が取り囲んだ。
10人…いや、もっとだ。

「大丈夫。きっと、私なら大丈夫。」
ゆりあはそう言って笑った。
「でも…アナタの事も…わからなくなっちゃうのかな?それが、ちょっと寂しいな…」

ゆりあに銃口が向けられた。
そのうちの一人が、にじり寄ってくる。


ゆりあ…ゆりあ…ゆりあ…
僕は心の中で何度も何度も叫んだ。

それは、決して届く事のない叫びだ。

「ねえ。大丈夫。アナタが大丈夫になるようにおまじないかけてあげるから。」
「ゆりあーーーーーーー!」

「ゆりあぴーす。」

今までで一番輝いた笑顔がモニターいっぱいに広がった。

そして…
モニターからその笑顔が、ぷつっと消えた。






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