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「ゆりあ…いい?先に戻ってるんだ。大丈夫、僕もすぐ戻るから。」
「え?…あ、うん。わかった。ねえ、絶対に戻ってきてよ?ヤだよ?一人ぼっちにしないでよ?」
コンビニのお菓子の棚を眺めながら、僕はゆりあにそっと耳打ちをした。
ゆりあが不安そうな顔を見せたが、僕の表情が硬くなったのを見て、すぐに頷いた。僕からカードキーを受け取り、レジで会計を済ますと、ビニール袋を揺らしながらマンションの入り口へと駆け足で戻っていく。

僕はその後から、ゆっくりとコンビにを出てわざと人気の無い裏のほうへと回った。

「のんびり話をしに来た訳じゃないよな?」
僕は暗闇に向かって声をかけた。
がさがさっと植木を揺らす音がする。その中からスーツ姿の男が現れた。
「君はいい男だな。危険が迫った事を知ると、さっと守るべき者をその場から離れさせる。騎士としては最高の振る舞いだ。」
「ほお…杉村大蔵さんじゃないですか。意外な人が出てきたもんだ。」
「俺も満更じゃないな。まだまだ顔は知られてるようだ。」
大蔵はそういうと、軽く右手を掲げた。
10人ほどの黒スーツを着込んだ男が現れ、僕を取り囲んだ。

「先ほど、システムに穴が開いた事が報告されてきたよ。見事だと言っておこう。開いた穴はもう塞いだがね。しかし、君はもうあのシステムから仕入れる情報はもう得てしまったんだろう?そして、君が次に起こす行動は…」
「ああ。アンタ達の土俵に上がりこませてもらうよ。」
「そんな事が出来るかな?あそこに入る事など、普通の人間には出来っこないさ。あそこに入れるのは、この世の中を動かす立場に立つ事を許された者だけだ。俺のようにな。」
「普通の人間?ああ、そうかもな。でも…僕は…違うんだろ?なんたって、スーパーSクラスなんだからな。アンタ達の格付けが正しい事を証明してみせるよ。」

「残念だな。俺は、いささかその評価に不満を持ってるんだけどな。俺よりお前が上だとは、どう見ても思えない。」
「なるほど、それで、この場で確かめておきたい…と?」

僕を取り囲んでいた男のうち、一人が僕に掴みかかってきた。僕は、その男の襟を軽く握り、足を払った。男の体が宙に浮く。そのままアスファルトの上に叩きつけられた。
「ほう、柔道か。出足払い一本ってトコだな。」
大蔵が不敵に笑った。顎で黒スーツの男に合図を送る。
「柔道だけじゃない。こっちもいけるんだけどね。」

正面から来る男に向かって一瞬身体を沈ませて、下からパンチを繰り出した。顎を砕かれた男が派手に後ろ向きに飛ぶ。そのまま身を翻して、左手側の男の顔面に右ストレートを繰り出す。コークスクリュー気味のパンチが男のサングラスを割り、眼球を砕いた感触が伝わる。
右手の男には、手刀だ。頚動脈を叩ききるように斜めから首筋に振り下ろす。

あっという間に10人の男が僕の足元に転がった。
「調べてなかったのか?僕は、頭でっかちなだけの優男としか情報がなかったんじゃないだろう?」
「素晴らしい、さすがはSSの男だ。ぜひ、君が欲しいね。君の存在がわが国を救うことになるだろう。」
「わが国?どういう意味だ?」
「意味?残念ながら、君がそれを知ることはない。」
大蔵が笑みを消さずに内ポケットに手を入れた。

「君が文武に長けている事はよくわかった。しかし、コレには勝てまい。」
黒く重い、そしてリアルな銃口が僕に向けられた。
大蔵の笑みが消えた。躊躇する事無く引金を引く。

銃弾が僕の頬をかすめて、背後にあったマンションの壁を砕いた。
サイレンサーが装着されており、軽いぷしゅっという音しか回りには響かない。

「どうした?さすがのSSクラスもコレには勝てないか?さあ、跪け。命乞いをしろ。泣き喚け。俺に、助けてくださいと慈悲を求めるんだ。」
大蔵の顔に狂気の表情が浮かぶ。

「アンタ…一次開拓すらされてないんだな?選ばれなかった男か…それを知るのも結構しんどいな。世の中に必要ないって宣告されたようなモンなんだからな。」
「な…なんだと?違う。断じて違う!俺は…俺は、この手で、この世の中を変える…日本を救うプロジェクトに関わっているんだ。俺の力がなければ、この国はだなあ…」
大蔵の狂気の表情が強くなった。

「どうした?撃てよ。ほら、今度は外すんじゃないぞ?ココだよ。ココ。ココを狙うんだ。」
僕は自分の眉間を指差しながら、一歩一歩、大蔵の方に歩み寄っていった。僕を狙う銃口が小刻みに揺れる。

「大蔵さんさあ…人間にランク付けなんてないんじゃないかな?僕も今、すっごく実は怖いんだ。そりゃそうさ。銃を突きつけられて怖くないヤツなんているわけがない。な?人を撃つなんて、そんな事やめようよ。アンタにはそんな事似合わないよ。僕ね、アンタの事好きだったよ。なんか憎めなくてさ。急に場違いな場所に上げられて舞い上がっちゃうトコなんて最高だった。な?無理しないでさ。」
僕は、大蔵に優しい目を向けた。彼を動かしていたのは、強烈な劣等感だったのだろう。目の前で「選ばれ」ていく男達。恐らくそれを監視し、時には鎖に繋ぐ役割しか与えられなかった男が感じた屈辱…

「な。もういいだろ?大蔵さん。アンタには推しメンいないのかい?その子がこれ以上、誤った道を歩かされてるのを見たくないんじゃないの?本当は。」
僕が、大蔵の肩に手をやった。魂を抜かれたように銃を下ろす。

「僕に任せてくれ。な?教えてくれないか?どうやって、アソコに入ればいい?いや、近づき方だけでもいい。頼む。」
僕の質問に大蔵が答えようとした。顔を上げ僕を見る。

そして、ちょっと引きつった笑いを浮かべた。
昔、テレビでみた時に良くみた顔だ。
僕から一歩離れる。そして、下ろしていた銃口を自分のこめかみに押し付ける。
「や…やめろ!やめるんだ!」

ぷしゅっ…
小さな音が鳴った。

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