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バーに行こうかと迷ったけど、僕は握手会の会場からまっすぐホテルに戻った。明日は、特に名古屋での予定は無い。普通なら、ホテルや今日無理を言って握手会に潜入させてもらった事について、芝さんに礼を言って東京に引き上げるのが筋だろう。
厚意に甘えるのにも、限度というものがある。

しかし、芝さんは当然のように明日もこちらにいるんですよね?と、ホテルの延泊手続きをしてくれた。もちろん、その背景はちゃんと読めている。僕が帰ります、と言ってもなんだかんだで、この場に留まるようにするのだろう。

ゆりあが、かおたんに会ってどんな風に僕にアプローチしてくるのか…幾つかの選択肢を考えていた。
ただ、一つだけ。
僕は大きな賭けに打って出ようと思う。それだけだ。


チャイムが鳴ったのは。深夜12時を過ぎてからだ。
僕は3時間近くをベッドの上に横になって過ごしていた。
PCを見る訳でもない、TVを見る訳でもない。もちろん、眠る訳でもない。
ただ、ひたすらに待つだけだ。

僕は覗き窓すら見ることなく、ドアを開けた。
もちろん、そこに居たのはゆりあだった。
ただ、一つだけ僕の想像を超えることがあった。
そこに居たのは、今まで僕が会ったどんな木崎ゆりあよりも、可憐で儚げで綺麗で、そして愛らしい木崎ゆりあだった。
シンプルなネイビーのピーコート。赤いチェックのマフラーとちょっとだけ色合いの異なるスカートに黒いタイツ。やはりシンプルな黒の革のブーツ。普通の栄のその辺りを歩いている女子大生としても、地味な方に分類される装いだ。
それでも、ゆりあの輝きは圧倒的だった。薄暗くしていた部屋が、ゆりあが入ってきただけで、まるでディズニー・ワールドのような華やかでファンシーな空間へと変貌した。ちょっとはにかんだ笑顔が、その空気を一層強いものにしていた。

「中、暑いでしょ?コート脱いだら?」
「はい。外が寒かったんで余計そう感じちゃいますね。」
ゆりあがコートを脱いだ。中はやはりシンプルな黒のタートルネック。カシミヤ素材なのだろう、薄手だが温かみを感じた。タイトなシルエットのセーターが胸の膨らみを強調する。

「何か飲む?冷たいものなら冷蔵庫の中にあるし、お腹がすいているならルームサービスだって頼める。」
僕は聞いた。ゆりあが静かに微笑みながら首を横に振る。

どうやら、かおたんは僕の事を上手く説明してくれたようだ。
昼間と違って、警戒感が解けている事が伝わってくる。

ゆりあをベッドの上に座らせて、僕は向かい合うようにしてライティング・デスクの椅子に腰掛けた。

「かおたん、なんて言ってた?」
「あ…とにかく、使える人だから味方にした方がいいよって。」
「ははははは。使える人か。上手い事言うなぁ。でも、何かもっと違う言い方なかったかなぁ。」
「ホントに。かおたんってそういうトコ、余り気を使わないから。」

「ね…。私の事を話したほうがいい…んですか?」
ゆりあの大きな目が僕を見つめる。
僕は思わずドギマギしてしまった。
冷静に見つめ返すには、まぶし過ぎる。

「いや…その前に…やる事がある。」
僕は言った。決断が鈍る前に、やるべき事をやらなくては。
「やる事?」

「ああ。こういう事だよ。」

僕はゆりあをベッドに押し倒した。
セーターの裾を捲り上げる。白い胸元が露になった。
同時に、足を使ってゆりあの身体から自由をを奪う。
「な…なに?何するの?いや…やだって。お願い…」
「何言ってるんだよ?わかってるんだよ。君がこうされる事を求めてるって事くらい。いいじゃないか。君の…いや、君達のお望み通りさ。僕が欲しいんだろ?」
「や…やだって。そんなんじゃ…ちが…」

ゆりあの抵抗する力が徐々に弱くなっていく。
僕は強引にゆりあの下着を剥ぎ取った。
タイツを脱がせ、スカートも荒々しく毟り取る。

「や…やめて---------------!」
枕元にあった大きな花瓶にゆりあの手が届いた。
中には、小さな花をつけた薔薇が数本ささっている。

花瓶を手に取ったゆりあが、それを渾身の力で僕の後頭部に叩き込んだ。
派手な音と共に、花瓶が砕け散り薔薇の花が辺りに散らばっていく。
僕は、痛みというより、その衝撃の強さを全身で感じた。
ゆりあの取り乱した姿が、僕の視界の中でどんどん薄れていく。
そして、その姿は完全に暗闇の中に消えて失せてしまった。



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