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「ちょ…ちょっと待って。いや…ここまで来たら、もう何を言われても疑おうとかそんなつもりはないんだけど。」
玲奈の口から聞かされた話は僕の想像を遥かに超える事だった。

「君達が何者かによって洗脳を受けている事は分かった。そして、運営の指示で[ターゲット]になった若い男性を言葉巧みに、時には巧妙に仕組まれたシナリオで誘い込み関係を持つに至る。メンバーは加入時より、その事が、全ての人を幸せにする手段で、それを行う事が大きな使命でありそれを果たす事が出来るのは、選ばれた者だけに許された行為なのだ…と。」
「その通りです。」
玲奈が頷く。
「それで…君達が僕に求めている事は、彼女達を解放して欲しいということ。しかし、なぜ僕がそれを出来ると?」
「あなたが特別な存在…だからです。」
「特別?」
「ええ。あなたと関係を持つこと。今までもミッションは同じでした。これまで結構失敗は許されてきたんです。でも、今回は違うって。失敗は絶対に許されない…だから、私は思ったんです。きっと、この人は私達にとっても何か特別なものを持っているに違いないって。」

僕は玲奈の説明を聞いてもっとも気になっている事を尋ねる事にした。
個人的な感情でなく、重要度が高いと判断したからだ。
「じゃあ、新幹線の中での事も、昨夜の事も…みんな、仕組まれたシナリオだったいうの?ちゅりは…あの時、心配停止にまでなったんだ。それが、予め誰かの手によって書かれた筋書きだと?」
「はい…その通りです。」

参ったな…あの涙も、僕を誘ったあの目も…全部お芝居だったのか。
少しでも自惚れた自分を僕は心の中でなじった。

「しかし…その説明だと、今まで多くの男が君達の誘いに乗ってきたことになる。少なくとも、君達の誘いを断れる男がこの世にいるとは、到底思えない。もちろん、健康的な男なら…僕と違って…なら、間違いなく君達の誘いに乗り、君達の目的は達成されているだろう。それなのに、何一つそんな噂なんか広まっていない。そもそも、考えてごらん?これは、ある意味組織売春に近い事だ。玲奈ちゃん…かおたん…君達がそんな事を…」
そこまで言って僕には次の疑問がわいてきた。
いや、最初に一番気にかかっていた点だ。次は、この問題をクリアすべきだろう。
「何故、君達は洗脳から解けているんだ?」

「稀に自我が洗脳に勝つケースがあるんです。上の人は[解脱]って言葉を使っています。そうなると…私や今出のように…」
「そうか、卒業って形を取るのか。ん?かおたんは?」
「私は、そもそも洗脳されてないんだ。フリをしてるだけ。今出もそう。私達二人だけだと思う。洗脳されてないのも、フリをして通せたのも。」
「じゃあ、解脱して卒業の形を取らされたメンバーはどうなるんだ?」
「卒業といっても、解脱した者だけじゃありません。ちゃんと、使命を果たして卒業するってパターンもあります。ノルマを達成し終えたって表現が分かりやすいですね。今も、芸能活動を続けていたり、一般人になっても今出のように消息がしっかりしてる子みたいに。」

「…くーみんや、ゴマちゃんは?真野ちゃんや、エリカは?彼女達は、卒業以来、綺麗過ぎるほどに僕らの前から姿を消している。」
「…私もそうなります。この使命を果たして卒業する事は、何よりの名誉とされます。将来にわたり、幸せな生活が保障されている。そう聞かされています。でも…そうじゃない人間は…生きる価値すらない…そう教わりました。」

「なんて事だ…」
玲奈の答えに僕は絶句した。許せない。
この感情をどう表現すればいいのか。
誘いに乗った男達がどうなるかの予想もなんとなくついた。
しかし、それはどうでもいい事だ。
何よりも、純粋な少女達の思いと体を汚してまで、そんな事をする事の意味が全く分からない。分かったとしても、それを許し理解する事など、僕には絶対に出来ない。

「ヤバいで、かおたん。ヤツラ、感づき始めた。こっちに集まり始めてる。おい、まだ45分しか経っとらんやんか。」
「う~…マズいわ…こりゃ、兄さんだけでも逃げてもらわないと…」
「かおたん、パソコン借りるよ?」

僕はかおたんの使っていたノートブックを奪い取った。
舞がモニターを見ていたほうのPCも手元に持ってくる。

「そうか…僕とメンバーを監視してたのが、こんなに居た訳か。これを…かおたん、なかなかやるね。上手くシールドを使って僕らが別の場所に移動したように見せかけたのか。という事は…ヤツラは自分の目で僕達を追っている訳ではない?まさか…ロボットなんてオチはないよな…」
「かおたん。このPC無いとコメダ投稿できない?」
「いや…それは大丈夫だけど…ただ、これが一番スペックが高くって…」
「ごめん。今度新しいPCプレゼントするよ。もちろん、大須で売ってる奴で一番ハイスペックな奴を。」
僕は、2台のPCに同時にコマンドを打ち込み始めた。
ブラックアウトした画面に呪文のような文字が並び始める。

「な…何やってるんですか?」
玲奈が僕の手元を見ながら目を丸くする。
僕は笑顔を浮かべながらひたすらキーボードを叩いていく。

「よし…と。これでたぶん1時間は時間が稼げる。」
再び画面が地図表示になる。赤いドットが一気に名古屋駅方面に向かっている事を示し始めた。ある何点かは東名の名古屋インターの方へ。残りのある点は恐らくセントレア方面に向かい始めたのであろう。
「所詮付け焼刃だけどね。さあ、ここから出よう。かおたん、このPCは借りてくよ。色々と調べなくちゃならない事がある。」
「兄さん…何者?私が2年近くかけて作ったモノをこんな簡単に…」
「かおたん、君は天才だよ。きっと、僕と同じね。」
僕はかおたんにウインクを送った。

とりあえず、ホテルに戻ろう。
そして、いくつかの仕掛けをしなくては。
まずは、今日僕達が接触した事を事実から消去しなくては。
何かのシステムトラブルに見せかけてもいい。
何か方法は見つかるだろう。

しかし、僕がやらなくてはならない事は、もっともっと奥の方に潜んでいる。

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