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KII公演は本当に素晴らしい。各チームの新公演が遅れに遅れまくる中、「シアターの女神公演」は、その完成度をますます高めていた。僕はもちろんゆりあ推しだし、Sの新公演はその魅力を最大限発揮したものになっていると思っている。でも、公演そのものの「楽しさ」はKIIに敵わない。
パフォーマンスの素晴らしさ、MCの楽しさ、輝く汗と笑顔。
まるでこの公演の1曲1曲が彼女たちの為に用意されたものかと思う程だ。

コーヒーで汚れたお気に入りのチノの代わりに買ったパンツの素材が今一気に入らない事なんて、全く問題なかった。センターで弾けるあかりんの姿に目を奪われ、阿弥ちゃんの「はじめまして。柴田阿弥です」にやられ(るみもいらっとする位には可愛いのだけどw)、あいりんとこあみの妖艶さにノックアウトされ、ちゅりの夜風にとどめを刺される。

僕は、色んなメンバーに何度も何度もレスを送られた。
そんな事、周りの皆が同じうように思ってるんだよ…そう言われるかもしれないけど、そうじゃない。
だって、今日の僕は下手最前列の席。入場順は3順目。
わざわざメンバーが僕の前まで来てくれるんだから。

ま…完全にただの妄想なんだけどね。

僕のラッキーは今日も続いていたようだ。
ラストの「僕たちの紙飛行機」。メンバーがそれぞれのメッセージを書いた紙飛行機を飛ばす。
真ん中付近から投げたあいりんの紙飛行機が軌道を曲げ、僕の胸に刺さるように飛んできた。
あいりんが、それを確かめるように僕の方を指差した。

ほらね。ちゃんとレスくれてるでしょ?

素晴らしい公演だった。メンバーの表情からもそれが伝わってくる。
1人1人の顔が輝いているのは、汗のせいだけではない。

「それでは、最後の挨拶をしましょう。」
メンバーが横一列に並んで手を取り合った。
ん?ちゅり声枯れてる?気合い入ってたもんなあ。フルメンの公演久しぶりだったし。

「せーのっ…ぐっ…がっ…ば…」
え?どうした?ちゅり。顔が真っ青だ。胸のあたりを掻きむしるようにして、その場に倒れ込む。
「きゃ----------------------っ!」
複数のメンバーの悲鳴が劇場に響く。ファンもスタッフも何かマズイ事が起こった事を一瞬で把握した。
しかし、誰もがその場を動かない。動けないのだ。

「そこ!スタッフ!何をしてるんだ?幕を。幕を引くんだ!早く!」
僕はステージの上に飛び乗って叫んだ。倒れ込んでるちゅりの隣に滑り込むようにして身を屈めた。
警備員が二人、僕を押さえようとステージに駆け上がってくる。
「触るな!僕は、救命救急の心得がある。一刻を争うんだ。この場に救命医、もしくは看護師がいるか?いなければここは僕が何とかする。早く幕を!」

僕の口調の強さと鬼気迫った表情で、事態の深刻さを感じとったのだろう。警備員が慌てて、身を翻した。さっと幕が引かれる。観客も一瞬騒然となったが、凍りついたようにその場から動かなくなった。

僕はちゅりの口元に耳を当ててみた。呼吸が無い。次に胸に耳を当てる。
同時に頸動脈に手を当ててみた。
ダメだ…脈が触れない。
「AEDだ!誰かAEDを持ってきてくれ!」
「き…君。これは…」
支配人の姿がステージの上に現れた。
「僕が誰なんて今はどうでもいい!早くAEDを持って来てください!芝さん、今すぐだ!それから、救急車を!」
「わ…わはああったはああぁあ。」
芝がアタフタとステージを去っていく。メンバーは周りで途方にくれたような顔をしている。
皆、一様に涙を流してその場に座り込んでいる。

「あかりん!あかりん!泣いてないで!こっちきて。こっちだ!」
「わ…わ…わた…し…イヤ…イヤイヤイヤイヤあぁぁぁぁあ!ちゅりさん…ちゅりさん。死んじゃイヤだ-------ちゅりさん。ちゅりさん!」
「あかりん!」
僕はあかりんの頬を張った。ちょっと強く力を入れ過ぎたか…でも、仕方ない。
おかげで、あかりんが我に返ったような顔になった。
「いい?この時計で…10秒毎に時間を教えて。いい?10秒だよ?」
「は…はああぃいいい。じゅ…10秒ですねえええ?」
「大丈夫。ちゅりは僕が助けるから。必ず。」
あかりんは、僕から受け取ったゆりあモデルのTIMEXを食い入るように見つめた。
祈るような視線を秒針に注ぐ。

「ちゅり…ゴメンね。」
僕はちゅりの胸の上で両手を組み合わせ、そのまま強く胸を押した。
「いち、に、さん、し、ご…」
まずは30回。肋骨が折れる位の力で胸部を圧迫する。心臓マッサージだ。
30数え終えると、今度は左指で鼻をつまみ右指で口を開かせる。口移しで人口呼吸だ。
2度呼吸を送りこむと、再び胸部の圧迫に移る。

「に…20秒…」
「あかりん!もっと大きな声で。」
蘇生に時間がかかる程、脳へのダメージが大きくなる。駆けつけた救急隊員に心肺停止してからの時間を正確に伝える事が大きな意味を持つ事がある。

何度目かのサイクルを経ても、ちゅりの呼吸と心音は戻って来なかった。
3分を過ぎようとした所で、ようやく芝がAEDを持ってヨタヨタと現れた。
「みんな、下がって!」
僕はAEDのパックを乱暴に開いた。電子音で使い方のアナウンスが流れるがそれを無視して、パッドを取りだす。
「ちゅり…助かったら、何度でも何度でも謝るから。今は…ゴメン!」
僕は、ちゅりの衣装を荒々しく引きちぎった。真っ白な胸元が露わになる。
AEDのパッドを二か所ちゅりに貼りつけ、僕は祈るように起動ボタンを押した。
軽くちゅりの身体が振動で揺れる。

「戻った!ちゅり!しっかり!」
「戻った?ホント?ねえ?ホントなの?大丈夫?もう大丈夫なの?ね?ね、ね、ね?」

あかりんが全身をブルブル震わせている。やっとの思いで、その場に座っているみたいだ。
まだ予断は許せない。でも…これ以上、この子に心配をかけさせてはいけない。
僕は、無理やり笑顔を作って、頷いた。
大丈夫だよ。あかりん、ありがとう。

それを見て、あかりんがその場に倒れ込んだ。小林亜実がその姿を慌てて支える。
「さ…3分じゅ…15秒…位です。」
それだけ言うと、気を失ったように目を閉じた。

救急隊員が到着した。僕は状況を簡潔かつ十分に説明した。
「完璧な対応です。あなたは医療従事の方でしょうか?」
「いえ、たまたま、その手のレクチャーを受けた事がありまして。」
「とはいえ、なかなか普通はここまで落ち着いて対応出来ないものです。恐れ入りますが、状況をもう少々ご説明頂きたいので、このまま病院までご一緒頂けますでしょうか?」

もちろん、僕は同意して救急隊員の後に続いた。
固唾をのんで状況を幕越しに見守っていた観客から拍手が沸き起こった。

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