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困るんだよなあ…そうやって目の前で腕組みをしたまま黙り込まれると。
そうか、それって俺がいつもやってる事か。
コレやられると下の者はなんて声かければいいかわからなくなってしまうんだな。うん…気をつけよう。

かれこれ10分以上になろうとしていた。
小泉Jr.の眉間には深い皺が寄っている。二つのモニター画面を交互に覗き込む表情は父親そっくりだ。本人はそう言われると「光栄ですね。」と答えているが、おそらく本心は違うはずだ。彼が抱えている野心を果たす為に、親の七光りだろうが何だろうが、使えるものは全て使おう…そう思ってるだけにしか過ぎないのだろう。

「秋元先生。松井玲奈さんの卒業は本人の意思ですか?」
ようやくJr.が口を開いた。来るだろうな、そう思っていた質問だ。
「いえ、本人はもう少し頑張ると言ってたのですが…」
「確かに、第1メイト開拓力も第2メイトへと覚醒させるのにも、かつて程の実績はなくなっている。だが、まだその力はグループ屈指ではないのでしょうか?彼女が抜けたとして、誰がそれをカバーできるのでしょうか?」
「やはり年齢が進んでくると、どうしても解脱が進む傾向がありまして。もっとも、大島や小島のように特殊なケースもありますが…」
「しかし、松井玲奈さんはまだ22歳ですよね?彼女がそうだってなると、主要メンバーはこの先なかなか期待出来ない…そうなりますよね?だから、世代交代を急ぐ必要があると、常日頃申し上げてきた。あなたも、そうおっしゃってましたよね?」
Jr.の言葉は柔らかい…が、ジャックナイフのような鋭さがあった。
物静かに見えるのだが、下手な事を言えば容赦なく鋭利な視線で突き刺してくる。そういえば、いたな…こんな迫力を持った子が。

仁藤か…アイツは良かった。
アイツくらいじゃないかな。私に緊張感を抱かせたメンバーは。
そういう意味では、アイドルなんかより政治家にでもなったほうが、アイツの為には良かったのかもしれないな。
今となっては、そんな事など決して出来ないのだけど。

「世代交代でしたら…」
「進んでいる…と?」
Jr.の目線が再びモニターに注がれた。
「確かに、第1メイトの開拓に貢献してくれてる方は増えました。特に島崎遥香さん、川栄李奈さんあたりは。しかしですね…肝心なのはきちんと2次レベルに覚醒させなくては意味がありません。島崎さんなどは、2次覚醒実績が皆無と言ってもいい位ですからね。最近では、須田亜香里さんや渡辺美優紀さんの数字に圧倒されているじゃないです。第一覚醒でのデータも、古畑奈和さん、宮脇咲良さん、朝長美桜さん辺りに急迫されている。もはや、地方をメインにプロジェクトを進行させるべきかもしれませんよ?」

「おっしゃるとおりです…」
秋元は眼鏡のフレームに手を当てて、そう答えるのがやっとだった。
「秋元先生。私がなぜ父…いえ、小泉先生からこのプロジェクトを引き継いだのかおわかりですよね?ただ単に、このプロジェクトの発起人が私の父であった…という事ではありません。誰よりも48グループの事に詳しいのが私だったというだけの事です。」
「よく、存じております。」
「まあ、いいでしょう。超選抜世代の後のシームレスな継承は上手く行かなかったとはいえ、その次の世代にはかなり期待できるメンバーが多そうですからね。本部も地方も。」
「ええ。更にグループ拡大に努めてまいりますので。」

「それでは、定例MTGはここまでで…今日は、秋元先生にお見せしたいものがあるんですよ。」
「おお、ひょっとして…ですか?」
「ええ。ついに本稼動をスタートする事が出来ました。ぜひ、ご覧になって頂きたいと思いまして。」

最近ではなかなか見なかったレベルの、少し緩んだ笑顔になったJr.の後に続いて秋元は部屋を出た。すぐに2名の秘書官…とは言っているものの、明らかに風貌がそれらしくない、屈強で軽快な男…が前後を守るように歩き始める。

入り組んだ廊下の奥にあるエレベータの前を二人の守衛が守っていた。
Jr.すら厳重なボディチェックを受けている事が、このエレベータがいかに重要なものなのかを意味している。
「何しろ、国家の最高機密ですからね。」
Jr.の笑顔が逆に秋元を緊張させた。

エレベータの中には、階数表示のボタンも何もなかった。ドアが閉まると自動的にするすると動き出す。体感的には相当高速のエレベータだ。しおかし、登っているのか下っているのか、それとも横に移動しているのか…それすら秋元には感じ取る事が出来なかった。

到着を知らせるチャイムもなく、そして音もなく扉が開いた。
その先にはまた長い廊下。
元いた場所との位置関係など、もはや全然掴めなくなっていた。
無論、そうなるよう設計されているのだろうけど。
廊下の突き当りには、銀行の大金庫のような扉があった。
「秋元先生、この鍵を差し上げます。その前にまずこちらを覗いていただけますか?網膜認識の登録を致します。」
秋元が運転免許センターで視力検査をする時に使うような機械を覗き込んだ。あっという間に電子音がなって登録完了を知らせる。
「オッケイです。では、この鍵を…お一人では絶対にこれは開きません。二人同時に回さないと…よろしいですか?いち、にー…さんっ」
超近代的なセキュリティには似つかわしくないクラシカルな鍵を右にぐいって回すと、大きな音がして扉がゆっくりと開いた。

秋元は扉の向こうに広がる光景に思わず息を呑んだ。
相当、いや凄まじいほど大げさなものを予想していた。
しかし、目の前に広がっているそれは、自分の想像力のスケールの小ささを思い知らされるものだった。

向こう側が見えないほどの広大なスペースの側面一面にモニターが並んでいる。部屋…これを部屋と呼んでいいのか分からない程に広大なのだが…の大きさの為に小さなものに見えるが、家庭用テレビのもっとも大きなサイズほどは優にある。何千?いや…万の単位なのかもしれない。そのモニター一つ一つには鮮明で明晰な画像で人物の姿が捉えられている。そして、そのモニターを見つめる大勢の人間達。みな同じようなスーツを着込み同じ姿勢でモニターをチェックしている。秋元はその中の一人の表情をちらっと見てみた。しばらくの時間が経ち、その男が瞬きをするのを見て、ちょっとホッとした。とても、人間に思えなかったが、どうやら人間らしい…

その一角に、さらに厳重にセキュリティされた部屋がある。
「あの中が…?」
「そう、わが国の科学技術の粋を集めた、まさに心臓部です。わが国の命運を握っているエリアと言っても良いですね。」
秋元が息を呑んだ。
その音が、まるで爆弾が爆発したかのように周囲に響いたような気がした。
ここに入った時と同じようにして、そのエリアに入った。

空気が違う。
そのエリアにもやはり無数のモニターがあった。
しかし、それをチェックしている者たちは、それこそ人間に到底思えなかった。瞬きどころが、呼吸すらしていないのでは?そう思うほどだ。

モニターには、やはり鮮明な映像で若い男達の姿を映し出していた。
そして…AKB48G全メンバーの姿が。

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