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これもダメか。全く忌々しいな…

さっきから、レベル4…クリティカルなインシデントが発生している事を意味するパイロットランプが点灯しっぱなしだ。
保守チームと一緒にその原因として考えられる要因を一つ一つ潰していく。まるで晩秋の季節に、絨毯のように散らばった落ち葉の中に一枚だけ紛れてるイミテーションの紅葉を見つけるような、気の遠くなる作業だ。

「やっぱりダメ?」
保守チームのサブマネージャーが、弱った鰯のような目で僕に聞いてくる。なんで、この人はいつもこういう言い方をするんだろう?「やっぱりダメ?やっぱり?」インシデントの管理・対応は保守部門の仕事だ。ヘルプを必要としてるなら、頼み方ってものがあるだろう?
確かに、このネットワークシステムを構築したのは僕だし、その運用に関しても僕のチームがコントロールしている。会社はPPDIOOを実践するなんてカッコいい事言ってるけど、実際はそうじゃない。設計構築運用保守…結局はスキルのある人間に仕事が集中するのは、いつになっても変わらない。

元々東大を出て研究職に就くつもりだった。教授もそれを期待していたと思うし、ネットワークインフラの国家戦略に関わってくる事項を題材とした研究にはそれなりの意義を見出していた。
でも、僕は一般企業である今の会社に入社するという進路を選んだ。
誰もが驚いたし、誰もが引きとめようとしてくれた。と、同時に、僕が一度自分で決めた事を絶対に曲げない事も誰もが知っていた。
なぜ?入社して5年経った今でも、それを上手く説明する事は難しい。というより、その理由を僕自身、明確に持っていなかっただけなんだろう…。とにかく、あの時はそうする事がまるで自らに課せられた定めのように思えたんだ。神のお告げとまで言うのは言いすぎだろうけど。



370坪ある広大なオペレーションルームには、常時50人近いエンジニアが24時間体制でネットワークの監視をしている。
ネットワークサービスの機器販売から、導入準備・システムの設計から保守と管理までを取り扱うネットワーク大手の位置づけをされているのが、僕が勤務する会社だ。

その中でも、このオペレーションルームによる集中遠隔保守は最大の売りだ。どこかで、システム上の不具合…インターネットが繋がらなくなった、メールが届かない、といった軽いものから、操業ラインが動かない、オートマチック回路が寸断される…といった原因究明に時間がかかり、しかも緊迫度が高いものまで…が発生すると、アテンションが鳴らされ、その原因究明と対応策、場合によってはメンテナンスに必要な機材を24時間、全国どこのクライアントへも2時間以内に届けるというサービスだ。

このオペレーションルームはまさにそのサービスの機関部であり、そこで働くエンジニアはまさにプロ中のプロ…といけばいいんだけど、そうはいかないのがこの仕事の難しさ。まあ、僕の人事評価がいつも最高ランクなのは、ここで人が出来ない所まで存分に辣腕を発揮している…とされているからなんだけど。


普段は残業なんて厭わない。働けば働くほどそれだけ収入は増えるし。幸いウチは世間で言う「ブラック企業」ではない。過重労働を強いられてるって点では大差ないかもしれないけど、その分の手当てはしっかり15分単位まで支払ってくれる。
ただ…今日はダメだ。最悪、徹夜になったとしても、絶対に明日のお昼までには片付けなくちゃ。どんな事をしてもだ。

だって、お昼の新幹線に乗らなきゃ、名古屋での劇場公演に間に合わない。
この日の為に、ホールコンサートも総選挙も横アリ単独も干したんだ。狙いを定めて見事ゲットしたチケット。
ゆりあの生誕祭に入ること意外に、優先される事なんて何もない。

「さ、次のテストに移ります。」
お前タフだな…そんな声が聞こえた。
当たり前じゃないですか。ここで頑張らなきゃ、いつ頑張るんですかって。

今でしょ?
ああ、もうそんな事言う人、誰もいないですけどね。


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