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「馬鹿な!湯浅だと?この無能が?なんにも仕事らしい事が出来ないこの男が、経営再建だと?はははははは。半沢。お前、気でもおかしくなったか?はっきり言おう。その男はただのお飾りだ。せいぜい出来る事と言ったら、メンバーの愚痴や不満をたらたらたらたら聞く事くらいだ。」
「あなた方の誰が、それを出来ましたか?」
半沢は戸賀崎の笑いをたった一言で消した。
再び、両手を後ろ手に組んで話し始める。

「いいですか。このAKSにとって、最も大切なのはメンバーそのものだ。彼女たちこそ、財産であり唯一の経営資源だ。ただ、あなた達の最大のミスはそれをただの「資源」として扱った事だ。彼女達が何を考え、何に喜び、何に悩み、何を目指し、何を夢見て…あなた達の誰が、そんな事を考えてあげたというのか?もっとも、大切な事。それが出来るのが、この…あなた方が無能と呼んだ男なんだ。」
「半沢さん…過大なお言葉を…」
湯浅が頭を掻く。
「しかし…だ。確かに、この男には大きな欠点がある。…湯浅社長…そうですね?」
欠点…単刀直入に言われ、湯浅が急に真顔になった。
湯浅社長が苦笑する。
「ええ。正直、経営者としては、経営判断を担うような役割は彼には任せられませんね。このビジネスには
3点、大事な事がある…私はそう考えます。一つは、人材マネジメント。大切なメンバーとのコミュニケーションです。その点では彼に期待できる部分は少なくないでしょう。」

「しかし…それと同じ位に大切なのが…プロデュースと営業です。メンバーを最大限活かしたプロモーションを企画立案、そして実行する。そして、それをマーケットに広げていく。その2点が無ければ、このビジネスの成功はありません。今回の話、そこに優秀な人材を配置する事が、伊勢島グループが経営参入して頂く条件でした。」
「はっ…そんな人材がいったいどこに?俺達ならダメだぞ?何しろお縄になるんだからな。」
「戸賀崎さん、あなた方には一切何も期待していない。いますよ。誰よりも適任がね。入ってきて下さい。」

姿を現した二人。
戸賀崎は一瞬目を丸くしたが、すぐにその視線を伏せた。
「なるほどな…半沢さん。これもアンタの仕掛けか?」
「紹介しましょう。新たに総合プロデューサーの職に就く松井玲奈さん。営業管理の責任者になる須田亜香里さんだ。お二人は、近々SKE48を卒業してそれぞれの職に専念する事になります。」
戸賀崎の問いには答えず、半沢が二人を紹介した。
その顔には笑顔が無い。引き締まった厳しい表情だ。

「玲奈さん、須田さん。本当に申し訳ない。君達の決断が、彼女たちを救うとはいえ…君達の夢は…」
半沢の言葉に玲奈が柔らかな微笑みを浮かべる。
「私、自信があるんです。メンバーの…みんなが一番輝くのはどういう時かって。ゆりあの笑顔の裏にあるしっかりとした覚悟。ちゅりの暑苦しさと可愛くて仕方ないって思わせる性格。あいりんのちょっと変態だけど、底知れない程の才能。奈和のステージの上での妖艶さ、なんなんの誰かを元気にする力。花音の野心と阿弥ちゃんの直向きさ。そして茉夏の無条件に可愛いトコ。私なら、そんな彼女たちの魅力を一番いい形で出してあげる事が出来る。もちろん、SKEだけじゃないですよ。AKBだってNMBだってHKTだって。どのグループにどんな曲が合うのか、ライブは?劇場公演は?そんな事考えるだけで、楽しくて…楽しくて…たのしく…」
玲奈の目から大粒の涙がこぼれる。必死に笑顔を作ろうとするが、その涙はとどまる事が無かった。
「あれ…?あれ…おかしいなぁ。涙なんて…涙は悲しい時に流れるんですよね。半沢さん…私…こんなに嬉しいのに…こんなに楽しいのに…」

半沢は口を真一文字に結んで上を見上げた。
玲奈の気持ちは痛い程良くわかる。しかし…しかし、これしか方法はない。
他に今、この重要なポジションを任せられるのは彼女しかいないのだ…

玲奈の涙を優しい表情で拭ったのは須田だった。
「私も自己紹介させてください。このたび、営業管理担当として仕事する事になった須田亜香里です。私は玲奈さんと違って、何かに秀いでた所があるわけではありません。ですが、父の意向もあり、これを機にビジネスの世界で修業させて頂こうと思っています。私では至らない所があるかもしれませんが、多くの方のバックアップを受けて一生懸命頑張ろうと思っています。」
「須田…父?…まさか…君のお父様とは…」
大和田が何かに気づいたようだった。はっとした表情になる。
「はい。須田隆と申します。色んな会社を経営してますが…丸八会の会長も務めさせて頂いています。」
「大和田さん。須田さんのお父様は、東海地区で紡績商社を始めとして、多角経営をされている須田コンツェルンの総裁です。名古屋地区に本社を置く多くの企業の代表が所属している団体、丸八会の会長といえば、東海地区の財界のボスと言ってもいい存在だ。もちろん、伊勢島グループのその会員の一つで、今回のファンドに多額の出資をお約束頂いている。」

「でも、半沢さん。亜香里はアイドルの夢を忘れた訳じゃありませんよ。ほら、亜香里って既に完成されたアイドルじゃないですか?コレでビジネスも出来る、出来たオンナって箔がついたら…完璧じゃないですかぁ?」
「君にも本当に申し訳ない…」
半沢は頭を下げた。今回の話、丸八会の出資が無ければ上手くいかなかったに違いない。
それをまとめたのが須田だった。須田総裁は娘を自分の後継者に指名した。兄弟もいる須田だったが、そのビジネスの才覚を最も父に認められたのが娘である須田亜香里だったのだ。父は、娘に助けになる代わりにビジネスに専念する事を条件として出した。唯一だが絶対的な条件だった。

須田は笑顔で即答した。
彼女もまた、心の中に仲間を熱く思う気持ちを持っていたのだ。

「SKEメンバーの負債は、一旦メインバンクである東京中央銀行が融資致します。担保は彼女達が保有するストックオプション。経営移行後は、その債権を新会社は保有する事とします。もちろん、返済はして頂きますが、各自長期的な返済計画を作成の上、会社へ定額返済をしていく事になります。しかし、経営再建により株価回復は十分に可能で、その際にはストックオプションを行使する事で十分に早い段階での返済も可能…当行の融資部・渡真利次長よりその回答を先ほど頂いています。」

「お見事ね。今回だけは、そう言わざるを得ないわね。しかし…半沢さん。アンタにも何らかのペナルティがある事は忘れないでね。でも…あの愚か者たちを釣るし上げるのに忙しくて、アンタの事なんて忘れちゃう…かもね。じゃあ、ワタシはこれで。アンタ達…覚悟しておきなさいよ。」

「では…これで、経営会議は終わりですね。最後に…秋元さん。はっきり申し上げておく。確かにあなたは天才だ。クリエイターとしてもプロデューサーとしても、そしてビジネスマンとしても。しかし…あなたには、少女達の夢を食い物にした。自分の私利私欲のために。それは許されない事だ。私はそんなあなたを絶対に許さない。一生、犯した罪を償う事だけに費やして頂こう。二度とこの世界に戻って来られないようにする。必ずだ。覚悟しておいて頂こう。」
半沢が厳しく言い放った。


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