スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

4

マイクを握った秋元康は静かな表情で会場を見回した。そしてその視線を大矢に移す。
大矢は涙に濡れた目でまっすぐに射るような視線を秋元に向けていた。
チームSのメンバーが秋元と対峙するように大矢の後ろに並ぶ。
「真那?」
「大丈夫だから。うん…大丈夫。」
中西優香が心配そうに声をかけるのに大矢が目線だけで応える。
大丈夫だ。自分にそう言い聞かせるように。

「大矢、この場でこんな事を言い出す事がどういう事かわかってるね?」
秋元の言葉は柔らかったが、表情は厳しかった。眼鏡の奥でその視線が鋭く光っている。
「はい。わかっています。」
「本気だね?」
「もちろんです。本気です。私の言葉に嘘はありません。」
「他のメンバーはどうなんだ?珠理奈?玲奈?須田は?中西は?桑原は…どう思うんだ?」
急に話を振られてメンバーはお互いの顔を見合わせた。
どうだって言われても…私達だって困惑してるんだ…でも、真那の気持ちは痛い程わかる。

「先生…あの…」
珠理奈は玲奈に支えられながらやっとの思いでその場に立っていた。何か言葉を発しようとするがそのあとが続かない。平田璃香子が介抱するように背中をさすっている。

「よくわかった。今回の件、どこに正解があるかどうか…それは誰にも解らない。私にもだよ。でも、私はプロデューサーとして今回の事を決断した。そしてそこには私なりの勝算と覚悟がある。大矢…お前にはどうだ?」
「私にも…覚悟はあります。そりゃ、私なんかには先生のような知識も経験もありませんけど…でも、きっと…頑張ります。私、死ぬ気で頑張りますから。」

秋元は黙って腕を組んだ。目を閉じ天井を見上げるように上を向いた。
最初は静かだった観客席が徐々に騒がしくなってきた。その多くはヤジだ。秋元はそのヤジに耳をすませていた。しかし…一人ひとりの声を聞き取ることなど出来ようもない。

「では…こうしましょうか。ファンの皆さんに決めて頂く…というのは?」
秋元が身体を観客席の方に向けた。大きなどよめきが起きる。賛成とも反対とも、どちらとも言えない反応だった。メンバーだけでない、ファンも秋元の突然の提案に戸惑いを見せていた。

「ファンの皆さんに決めて頂くって…どうやってですか?」
大矢が秋元に聞いた。
「そうだな…この役割には私も大きな期待を寄せているんだ。大矢も自分で言っていたように力不足では困る。実力も、運も…そして人気にも恵まれたメンバーでなければ…大矢、私にはお前に十分その力はあると信じるよ。しかし…ファンがどれだけその背中を押してくれるのか…それを私は見たいな。」
秋元は一旦大矢に向けた姿勢を再度観客席に向けた。

「え~みなさん。今、大矢真那からチームKへの移籍メンバーに立候補したいという申し出がありました。私はこの申し出を受けるかどうか…今回の重責を担う事が出来るかどうかをファンの皆さんに問いたいと思います。先ほどからお話しているように、私は今回の人選は実力、そして人気を兼ね備えているメンバーにしたいと思っていました。」
騒がしくなっていた観客席がいつの間にか静かになっていた。固唾をのんで秋元の言葉を聞いている。
「来る第4回、選抜総選挙。大矢真那が、上位の順位…そうですね…7位以内に入る事が出来たら…所謂神7と言われるポジションですね…それが出来たら、大矢の希望通りチームKに移籍するのは大矢真那、そういう事にします。」

会場から大歓声が沸き起こった。肩を叩きあいながら表情を引き締める者もいれば、隣あった同士で握手を交わす者も。一方でステージに向け親指を下に向けブーイングを飛ばす者、困惑した表情をする者もいた。

「秋元先生…あの…」
「どうした?覚悟はあるって言ったな?今更怖くなった…とは言わないだろうね?賽は投げられたんだ。」
秋元が大矢にそう言ってマイクを湯浅に渡しステージから去ろうとする。

選挙で決める?私が神7に入る?
ファンのみんなは何て思うんだろう?私は何て呼びかければ?
珠理奈を守る為に私に投票してくださいって言うの?そしたら、SKEの私を応援してくれてるファンはどう思うんだろう?大矢真那は自分の順位をあげたくてこんな事を言い出したんじゃないかって…私のやった事は…

大矢はその場に立ちつくした。

「秋元先生…いいんですか?選挙でそんな事を決める…って」
ステージ裏に出てから戸賀崎が秋元に声をかけた。
「批判は覚悟の上だ。構わないよ。それに…面白いじゃないか。予定調和は好きじゃないしね。」
秋元は目線で湯浅を呼んだ。
「今日からSKEメンバーの情報発信を一切制限するのをやめなさい。ブログ・ぐぐたす…twitterは…まだやらせてないのか。とにかく全て自由にさせる事。一切の検閲は禁止だ。メンバーには何があっても自分で責任を取るように徹底する事。その事でスポンサーや関係先に迷惑がかかったら、私が直接謝りにいくよ。」
「は…はい、かしこまりました。」
湯浅が頭を下げる。
「確か…SKEはモバイルだけでなくPCサイトのファンクラブもオープンさせるんだよな?投票券もつけてるよね?」
「はい…何とか間に合わせました。NMBもHKTも…少しでも不公平感をなくそうと。シングルには投票券をつけれなかったので、まだ不満の声は大きいですが…」

「わかった。楽しもうじゃないか。」
「先生!まさか…今回の事を?」
戸賀崎が聞いた。まさか、この事まで秋元康がしかけたサプライズなのではないだろうか?
この人ならやり兼ねない…

「まさか。いくら私でもここまでは考えていなかったよ。今回は大矢にしてやられた。」
秋元が笑って答えた。

スポンサーサイト

3

2012年5月22日 TokyoDomeCity Hall

「それでは最後の挨拶をしましょう。」
見逃した君たちへ2、チームSの「制服の芽」公演のステージ上、汗だくになったメンバーが手をつなぎ横一列になった。
その時、会場の一部で沸き起こったどよめきがやがて大きな歓声へと変わっていった。
きょとんとした表情を見せるメンバー達。劇場支配人の湯浅洋が現れた。

「え~こんばんは。ここで突然ですが皆さんにお知らせがあります。」
サプライズだ。噂されていた新公演の発表か?観客は色めき立った。
「かねてより、ご心配をおかけしておりました松井珠理奈のAKB48チームKの兼任の件ですが、いよいよその詳細が決定しましたのでご報告します。」
湯浅がそこまで話すと舞台後ろからタキシード姿の戸賀崎智信が現れた。
「まず、現在展開しております全国ツアーに新メンバーとして参加します。更に秋に予定されている新公演初日より秋葉原の劇場公演に出演、さらには…」
戸賀崎の口から珠理奈の兼任による今後のスケジュールが発表されていく。会場が騒然となり始めた。やがて罵声が飛び始め次第にその声は一つの塊となって大きなブーイングへと変わっていった。
「引っ込め!戸賀崎!」
「珠理奈は渡さないぞ!」
「話が違うぞ!それじゃ兼任なんかじゃない!やっぱり移籍なんじゃないか!」
「湯浅、何勝手な事言わせてんだよ!」

徐々にこわばっていく珠理奈の表情を大矢真那が心配そうな表情で見つめていた。
隣に立っている松井玲奈に寄りかかるようにしている。
珠理奈は立っているのがやっとにも見えた。

--------<<開演前>>----------------

「珠理奈。どうしたの?その髪」
「あ…見つかっちゃった…うん、ちょっとね。」
「ちょっとねって…」
大矢が珠理奈の髪を覗き込む。後頭部大きな脱毛による禿が見える。
円形脱毛症だ。

「最近ずっとエクステつけてると思ったら…いつから?」
「うん…」
「うんじゃなくてさ…」

珠理奈の眼に涙が溢れてきた。黙ってそのまま大矢の胸に顔を埋める。
電撃的なチームKとの兼任発表後に倒れ入院を余儀なくされた珠理奈。
復帰してきてから、前と同じように明るく笑う姿の裏には想像を絶するストレスがあったに違いない。
「お願い…みんなには黙ってて…」
そう言って肩を震わせる珠理奈の頭をそっと撫でながら、大矢は優しくその身体を抱き続けた。


-------------------------------------------------------------------


場内の雰囲気は最悪だった。
楽しかった公演の余韻は跡かたもない。最後の最後できっと発表される…そう信じて待ったファンもチームSの新公演が発表される事無く戸賀崎と湯浅が退場しようとした所で不満を爆発させた。係員の制止を振りはらってステージに駆け寄ろうとする者もいた。


どうしてなの?
どこまで大人たちは私達の事を弄ぶかのように扱うの?
今までガマンしてきた。どんな不条理な事でもきっと何か私達の為になる事があるに違いない。
そう思って来た。でも、ダメだ・・今度だけは理解できない。
これ以上珠理奈の苦しむ姿は見たくない…いや、苦しめるなんて私がさせない…

「ちょ…ちょっと…」
何かを言いかけた玲奈を制して大矢が声を上げた。

「ちょっと待ってください!私からもお話があります。ファンの皆さん、お願いします。聞いてください!」
突然ファンに大矢が呼びかけた。戸賀崎も湯浅も思わず足を止め振り返る。
「お願いします!私の話を聞いてください!」
タダごとじゃない…真那が何か言おうとしている。表情をこわばらせ涙を目にいっぱいに溜めた大矢の姿がスクリーンに映し出されると会場は徐々に静寂を取り戻していった。

大矢は大きく深呼吸するようにため息をついた。そっと目を閉じ、マイクを両手で持ち話始める。

「戸賀崎さん、湯浅さん…そして…いらっしゃってますよね?秋元先生。」
大矢が2階バルコニー席の一角に視線を送り言葉を放った。会場がざわめく。
「先生は、珠理奈がチームKさんから…何かを持ち帰る事で化学反応がおきる…そうおっしゃっていました。でも、珠理奈はもう何年もAKBさんの選抜メンバーとしてその役割を果たしてきました。ご存じの通り、今、珠理奈はその幼い身体で必死に先生の期待にこたえようとしています。でも…でも、珠理奈はまだ高校生になったばかりです。今は…今は他に大事な事があるんじゃないでしょうか。」

「そうだ!真那の言う通りだ!」
「真那!良く言った!」
会場から次々に声がかかる。

「もし…先生がおっしゃるように今のSKEにチームKから何かを持って帰る必要があるなら…その役を…」
大矢がまた大きく深呼吸をする。頬には大粒の涙が流れ始めた。声が震える。
それでも、絞りだすように次の言葉を続けた。
「その役割…大矢真那にやらせてください!今、この場で立候補します!」

会場から悲鳴のような声が上がった。
ファン同士顔を見合わせる者もいた。

「こんな事言って…何言ってるんだ…って言われるファンの方もおると思います。お前はSKEを捨てるのかって…お前がAKBに行きたいだけじゃないかって言われるかもしれません…でも…今は、何と言われても。私が何と言われても構いません。ただ…珠理奈には、SKEに残って欲しいんです。お願いします。どうか、私のわがままを許してください。そして…秋元先生。私じゃ力不足かもしれません。でも・・頑張りますから!どうかお願いします!」

多くのファンは大矢の言葉の意味を理解していた。真那が決して自分の売名の為にこんな事を言い出したのではないという事も。頭を深々と下げる大矢に温かい声援と拍手が送られた。

「やすす…!やすす!」
会場の一角から起こったやすすコールが次第に会場を包み始めた。
「おい。何をしてるんだ。照明をつけるんだ。閉幕のアナウンスを流すんだよ。大矢、お前も馬鹿なことを言ってないで…」
慌てて湯浅がスタッフに支持を飛ばしている。戸ヶ崎は苦虫をかみつぶしたような表情になっている。

「マイクを…いいかな?」
黒いジャケット姿の男がステージに現れるとそう言った。

鍵コメでご質問をいただきましたので…

先ほど、鍵コメでご質問を頂きましたので、お返事を兼ねまして…

こっそり再開したと書きましたが、決して見て欲しくないって事ではありません。
見て欲しくないなら公開しませんしね(^^ゞ

で、色んな場で(まあ、2ちゃんの事なんですがww)私の作品にたいしてご感想を交わして頂く事に関しても、決して困るとかそう事も全然ありません。実際書きこみはしていませんが、例のスレは毎日覗きに言ってますし、以前から皆さんの話題にして頂ける事は私にとっても光栄なことです。

もちろん、面白くねーぞ!って意見なんかもウエルカムです。前からお願いしていますように、厳しいご意見は私にとってスゴク為になる事ですしね。
ぜひどしどしご意見をお待ちしています。

あ、出来ればこちらに直接コメントして頂けると、直接のお返事も出来るので有難いんですけどね(*^^)v

お手柔らかにお願いします~


新作について

えっと、みなさん、お久しぶりです。

実はこっそり新作をスタートさせました。
色々と思う事がありまして(^^ゞ

でも、相変わらずバタバタしてるので、更新頻度はかなり低くなると思います。
みなさんをジリジリさせちゃうかも…って事で、コソーリと始めてみました。


6月に出場するアイアンマンへ向けた練習も続けていますし、結構バタバタもしています。
多分、今まで1回で更新してた分を週1~2…更新出来ればいいかな?って感じになると思います。


出来ましたら、ゆっくりノンビリお付き合い頂ければ幸いです。


2

「みなさん、こんにちは~!AKB48です!!!」

大場美奈の声に続いてメンバーが深々と頭を下げた。
会場から声援が飛ぶ…が、先ほどまでの盛り上がりはない。座席に腰を下ろす者やトイレに走る者の姿も多くみられた。序盤からの最高潮の盛り上がりもまるで小休止…一服入れるか…かのような雰囲気だ。

「SKE48さんの全国ドームツアー、私達も一緒にステージに立たせてもらってる訳なんですけど…」
MCのマイクを握りながら島田は複雑な思いでいっぱいだった。

SKE48…「さん」…か…
いつからこうなってしまったんだっけ?

あれは国の政策だったから仕方ないんだ…
去年の事…東海地震の可能性が低下し首都直下地震の予知が科学的に立証されたって事で、国の色んな機能が東京から移される事になった。国会や皇居は名古屋に、色んな企業の本社は大阪にどんどん移っていった。まるで引き潮が引いていくみたいに。東京はあっという間にゴーストタウンになって治安が悪化。秋葉原の劇場周辺なんて犯罪が日常茶飯事でおきるようになっちゃった。今では数少ない公演日は役に立たない警察の代わりにファンで組織された自警団に守られて物々しい雰囲気でやっている。

でも…それでも公演は出来ている。人気だって落ちてると思わなかった。事実、そうなってもAKB48名義で出されたCDはミリオンセールスを続けていたし、握手会だって開催こそ関東ではなくなったものの盛況だった。

そうだ…
やっぱり、そんな事が理由じゃない。
だって、地震なんてまだおきてないし。

間違いなく、私達の運命を変えたのはあの日だ。アレが全ての始まりだったんだ。

そう、「真那の乱」。
あの日からだ。




1

2013年夏 愛知県名古屋市 名古屋ドーム

「みなさん、こんにちは~!!」
息を切らしながら松井珠理奈が大きな声を上げる。満員の観衆が揺れた。
「SKE48です!!」
ステージ上に並んだメンバーが一斉に頭を下げる。
早くもドーム内のボルテージは最高潮に達しようとしていた。
「え~この夏、札幌ドームを皮切りに始まった全国4大ドームツアー。福岡、大阪と回ってきましたが、ここ名古屋ドームで最終日を迎える事になりましたぁ!」
「やっぱり、最後は私達の地元、名古屋ドームです!全力で突っ走りますので、みなさん、盛り上がってくださいね!」
松井玲奈と高柳明音も会場中を煽るように声を上げる。
「それでは引き続き、楽しんでくださいね~!次はこの曲です!」
矢神久美がさっと右手をあげるとステージが暗転した。チームEのメンバーが入れ替わるようにステージ上に現れる。スタートして1年を迎えるオリジナル公演曲の中の1曲のイントロが流れ始める。


「すいません~。この後、20分です。サブステージ脇に回ってスタンバイお願いします。」
楽屋の一室にスタッフが声をかける。
「はい。わかりました。みんな準備しよ?」
「ほ~ぃ。了解~。」
大場美奈の呼びかけに緩いトーンで応えたのは山内鈴蘭だ。姿見でゴルフスイングのフォームを何度も何度もチェックしながらで視線は鏡に向いたままだった。
「あぁ~今日は2曲ですよね?福岡じゃ3曲あったのに。ま、仕方ないか…本店の地元ですしね。」
背伸びをしながら川栄李奈が立ちあがった。
「あれ?ぱるるは?まだ戻ってないの?華怜も?」
中村麻里子が周りを見回して言う。
「ああ、今シングル曲やってるからじゃない?前半のメドレー。しかし、前半に最近のシングルもってくるかな?そりゃ、次から支店続くから向こうはいいけど、ウチから選抜行ってる二人は大変なんだよね。」
仲俣汐里が首をすくめて言うと、ドアをけたたましく開けながら島田晴香が飛び込んできた。
「みんな、もう出てくれってさ。なんか巻きが入ってるらしい。MCも短くしろだって。」
「また?なんか、どんどんウチらの出番削られてるじゃん?」
不満そうな顔をする大場の肩を島田がなだめるように軽く叩いた。
「仕方ないよ…行こ。」

Page top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。