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5.卒業コンサート



「本来は…事前に話さない事なんだが…」
秋元康が劇場のステージの端に腰かけて客席に向かって話しかける。

集まったメンバーを見て、高橋には秋元がこれから何を言うのかが分かった。
なんでだろう?多分…みんなはびっくりするんだろうな。
今まで、色んなサプライズがあった。
目的が理解出来ない事もあったし、未だに納得出来ていない事だってある。
でも…今日はなぜ秋元先生がこんな事を言い出すのか…その理由まで手に取るようにわかる気がした。


秋元先生から発表されたのは、1期2期生、全員の卒業だった。
今年のセットリストベスト100TDCの最終日にサプライズで発表される。
1期生6人、2期生9人。一気に15人も…
みんな驚くかと思ったけど、意外と冷静だったなあ。

いつかこんな日が来ると思ってた。
そのいつか…こんなに早く来るとは…
違うよね。今なんだよね。今しかないんだろうね。
多分、秋元先生は大きな賭けに出たんだと思う。
私達にとっても、そしてAKBの将来の為にも。

でも…もう一個の発表のインパクトが大きかったかな。

ついに…ついに東京ドームでのコンサートが決まった。
それが、私達15人のAKB48としてのラストステージになる。

6月9日…
あと…半年か。

私達に…いや違う…
私に…AKBのキャプテン・高橋みなみとして出来る事って何があるんだろう。

全てをやるんだ。出来る全ての事を。
そう…死ぬ気で。



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4.早春の土手



思ったよりも忙しいって実感はなかった。
分刻みのスケジュールは今に始まった事じゃないし。
正月気分なんてなかったのは去年も同じだし…

日差しが暖かい日だった。
珍しく冷たい北風もない。

高橋みなみは一人、荒川の土手に寝転がっていた。
目をつぶっても瞼の裏に太陽の光が残ってる。
小春日和っていうんだっけ?こういう日の事を。

鳥のさえずりが聞こえてくる。
あの時もここに来て鳥のさえずりを聞いていたっけ。

12月に始まった劇場公演。
全然お客さんが入ってくれなかった。
歌えない…踊れない…MCでも喋れない…
辞めようなんて思った事はなかった。
でも、辛かった。どうすれば認めてもらえるんだろう?
そればっかり考えていた。
何でもやった。人が全然いない街頭の、ステージもないところで歌った。
みんなでビラ配りもした。頭ばっかり下げてたっけなあ。


あれから6年。
何もかもが上手くいっている。

ミリオンセラー?紅白?レコード大賞?
誰がそんなことまで想像したの?
ガラガラの劇場でたどたどしく歌って踊ってた私達が?

上手くいきすぎてる?そんな事はないよね。
だって…みんな頑張ってるもん。努力は絶対に報われるんだ。
それを…一生をかけて証明する…そう言ったじゃんか。
まだまだだよ。私の夢はこんなトコで終わりじゃないよね。

背中についた芝生を払う事もせず、立ちあがった。
んーーーーーーーんっっと。
さ、今日は秋元先生の呼び出しがかかってるんだ。

手に持っていた一枚の紙に一瞬目をやる。
両手でそれを破ろうとして…やめた。
強く握ってくしゃくしゃになったその紙を静かに鞄にしまった。

3.紅白直前②



「ね…麻友。私って冷たいオンナなのかなぁ?」

「ん~冷たいってのとは違う感じかな。」

「じゃあ、どんな感じ?」

「腹黒な感じ。」

「そっかぁ…そうだよね…って、ちょっとちょっとぉ、違うでしょうがぁ!」

「あははは、ごめんね~。でも、どうしたの?今日のゆきりん、変な感じ。」

「あぁ。あのね。昨日帰ったらお母さんに言われたんだ。」

「ままりんに?なんて?冷たいって?」

「うん、アンタ泣いてなかったねって。
優子ちゃんとかたかみなさん、あんなに感激して泣いてたのに。
あっちゃんも佐江ちゃんも。なのにアンタはって…」

「私だってだよ。ニコニコしてた。」

「麻友はステージ上がる前にボロボロ泣いてたじゃん。歌の時は笑顔だったけど。
私ね…感激してなかった訳じゃないよ。たかみなさん見てたら、ぐっときたしね。
でも…ボロボロ泣ける程涙は出なかったんだよね…」


そうなんだ。私だって嬉しかった。
嬉しくないわけなんてない。だって、レコード大賞だよ。
でも…心のどっかで取って当然って思ってたのかな?
むしろ、ほっとした方が強かったからだよね。だからだよね。きっと。

2.紅白直前①



「本当に良かった…信じて頑張ってきて良かったね。」
「ホント、ホント。たかみな、間違ってなかったよ。
努力は必ず報われる…っと。」
受賞の余韻は一日経っても冷める事が無かった。
NHKホールに用意された巨大な控室のあちこちでメンバーの喜びが弾けていた。
高橋みなみを中心にして小さな輪が出来る。
初期、2期のメンバーが中心になって笑い声が響いていた。

「でも、いつまでも浮かれてられないよね。今夜の紅白だって頑張らないと。」
高橋が表情を引き締めた。


また一つ高い壁を越えたよ。
高い高い壁だったなあ。でも、すげー嬉しい。
この嬉しさを味わうためだったのかなあ。去年の悔し涙は。
今日の紅白…頑張らなきゃいけないのは解ってるけど。
正直、なんか気合いが…
頭もぼーっとしてるし、ちょっと喉の具合も…

ダメじゃん。何考えてるの?
私がそんなだらけた考え方してちゃ。
これからこれから…。こら。高橋みなみ!気合い入れないと!

「みんな、いいかな?円陣組むよ。」
「たかみな、大丈夫?ちょっと声掠れてるよ。」
「あっちゃん、ゴメンゴメン。大丈夫。昨日ちょっと騒ぎ過ぎたのかな?」
「はい、拡声器。今日は200人以上だからね。
声張り上げてたら今度は潰れちゃうから。ね、」

1.レコード大賞



「第53回 日本レコード大賞は…AKB48、フライングゲット!」

「きゃーやったぁ!やったよ!」
「すごい~!ホントなのかなぁ?」
「夢みたいだよね。スゴイよね~」
「ね、ね、ぱるる泣いてるじゃん~。」
「もー、やだあ。こっちまで泣けてきちゃう。」

年内最後の劇場公演を終えたチーム4と研究生のメンバーは劇場控室のテレビに噛り付いて歓声を上げていた。昨年悔し涙を流したステージで歓喜の涙にくれる選抜メンバーの姿がとても眩かった。


でも…
私達はこの栄冠を果たして喜んでいいんだろうか?
名誉なことであるのは間違いない。たかみなさんがずっと言ってた。
今年こそは…あそこで認められて、初めて私達は一人前なんだって。

この1年、私達はがむしゃらに走ってきた。
そして、認められてきた…そう思ってる。
胸を張ってこの栄誉を受けるべきだ。卑屈になる事は何もない。

でも…
なんで私は泣けないんだろう?
なんでステージの上の選抜メンバーの姿を他人事みたいに感じるんだろう?
たかみなさんの…前田さんの…優子さんの…篠田さんの…
あの綺麗な涙…
私の頬に涙が流れないのはなんでなんだろう?

羨ましい…
自分達に与えられた栄誉…
違う。
何かが違う。


島田晴香はテレビの画面を身動きもせずに見ていた。
いや…睨みつけていた。

この感覚…
前に味わった事がある。
高校の時?
そうだ。あの時に味わった感覚と同じだ…

新作のタイトル

タイトル決めました。


ここにいたこと


そうです。あの曲です。
ストーリも組み立てました。いつものようにラフスケッチのみです。
下書きもしてません(+_+)

でも、大丈夫です。今回は、ドタバタしない…と思います(笑)。

後は…書き出しをどうするか…そこだけです。
そこがまとまればスタートします。

こちらでもご覧になりながら、お待ちくださいませ。



お知らせ

大変申し訳ございませんが、一時コメントを承認制とさせていただきます。

私としては、皆さんには気軽に感想などを頂きたいと思っているので、本意ではないのですが…
もちろん、ご指摘やご批判を拒絶するものではありません。
むしろ、(作品についての)厳しいご指摘は歓迎するものであります。
一部そうでないコメントがお目に触れる事で、皆さんのご気分を悪くさせてしまわないよう…
という苦肉の策ですので、なにとぞご理解いただけますようお願いします。


暫くの間、ご不便をおかけします事をお許しください。
コメント自体をお断りしている訳ではございませんので、これまで通り遠慮なくお寄せ頂きたくお願いします。

年末準備

今日から年末年始のお休みに入りました。
とりあえず今日は朝から年賀状と格闘しておりました。
毎年ウチは4種類の年賀状を作ります。
1枚は家族用。娘の写真を中心にしたもの。
1枚は仕事関係用。私と妻が仕事関係の人に出す時用。
1枚は娘の友達用。
そしてもう1種類が私のトライアスロン関係の友人に送る用。

ウチは家族全員が一眼レフをそれぞれ愛用していて、大量に写真のストックがあるので、それの中からどれを年賀状に使うのか選ぶだけでも大仕事です。私のトラの写真は妻と娘がいつも撮ってくれていますので、その中から選びました。

それをフォトショ使って加工して…宛名印刷して…
いやいや、なかなか大変なんですよ。これが。
でも、もっと早くやっとけ…って話なんですが(^^ゞ

作業がいま一つ進まなかった理由がもう一つ。
こちらです ↓↓↓

akbseibu.jpg

今日届いた西武ドームライブのDVD。こんなの見ながらじゃそりゃ、作業もはかどりませんわな(*^^)v
このライブ、2日目と3日目を見に行ったんですが、あの時の事が思い出されますね。
ただ…NHK-BSでハイビジョンでやったのを見た後だと、さすがにDVD画質は…
ブルーレイで出してくれないかなぁ…

ちなみに付属写真集の1ページを開いてますが、こちらの方が次回作ではひじょ~に重要な役どころとなる予定です。今までそれほど活躍の機会が多くなかったと思うんですが、「らしい」キャラで登場してもらう…つもりです。

では…明日は大掃除だ…((+_+))


あとがき


「Counter for new selection」これにて完結となります。

いや…大変でした。
今回のお話は、とにかく暗くて救いがなくて残酷で陰湿で…
割り切って書いたつもりでしたが、世間がクリスマスの優しい空気に包まれてる中
心が荒んでしまうようなストーリーを選んだ事を結構後悔したりしました(笑)

本当は最後までそのテイストを保ったまま、作者も悪者として書き終えるつもりだったんですが、さすがにそこまで出来ませんでした…
この中途半端者!ってご指摘は覚悟しておりますです。

あと…
話を複雑にし過ぎましたね。

私の執筆スタイルは前から言ってますように、特にシナリオや下書きなしで勢いで書いていくというものです。ですが、こういう展開の話だと、綿密な構成を作っていかないと途中で破綻しちゃいますね。何回、「う~ん…」ってなった事か…
あと、伏線や仕組み・・・色んな事を説明する必要があったので、登場人物のセリフや情景描写をその説明に使ってしまい、微妙は感情表現や情景描写が出来てなかったと思います。なので、読んでくださってる方には、うるさく感じてしまったのではないでしょうか…

構成や話の展開、トリックや発想で皆さんを引きつける力はまだまだ私にはないって事を実感した今回の作品ですが、それでもトライしてみて良かったと思います。やはり、私が本当に書いていて楽しいのはどういうストーリーなのかって事もはっきりと認識出来ましたしね。

という事で、次回はど真ん中王道路線
(って言ってもそんな大上段に構える程を持ってる訳でもないんですが…www)で行こうと思います。

今回の作品で「???」と思われた方…これに懲りずにまたお付き合いして頂ければ嬉しいです。

そんな感じの今作でしたが、最後までお付き合い頂き、心より感謝いたします。
本当にありがとうございました。

64.閃光に包まれた笑顔



「それで…本当の黒幕は皆さん…って事ですね。」
指原がテーブルの向こうを見渡した。
「立見里歌さん、河合その子さん、永田ルリ子さん、そして高井麻巳子さん。
あ、すみません。皆さん今は苗字が変わってるんですよね?」
「黒幕ってなんか余りいい響きの言葉じゃないわね。でも…その通り。
今回の事だけじゃないわ。この人の名前を使って今まで色んな仕掛けをしてきたのも私達。
失敗も成功もあったけどね。最大の成功作品があなた達って事。」
高井麻巳子が笑う。秋元が隣で苦笑いを浮かべていた。

「でも…そろそろ飽きちゃったんだよね。だから…ちょっと遊んじゃった。」
「ヒマを持て余してる金持ちを誘いこんでね。いるもんだよね、退屈しのぎに莫大な金を出して喜ぶ馬鹿が。
でも…死んじゃったら元も子もないんだけどね。秋元先生、あとの揉み消しは大丈夫なんでしょうね?」
永田の問いにも秋元は苦笑して頷くしかなかった。

「秋元先生も、この方々にかかっちゃかたなしですね。」
指原が言う。
「だって…ねぇ。この人には詩を書く能力もアイドルをプロデュースする能力も何にもないんだもん。
私達が解散したあと、やることなす事失敗しちゃって。私達がアイディア出して詩を書いて…
そうして始めたAKBがこんだけ当ったんだから…私達に逆らえる訳ないじゃないですかねぇ?」
河合が秋元を横目で見ながら言う。
秋元はコーヒーカップを口に運び黙ってしまった。

「さあて…と。また新しい事を考えないとね。さっしーって呼ぼうかな?
何かいいアイディアはある?何か斬新な事がいいかな。」
高見が指原に聞く。河合も永田も高井も指原の顔を覗き込んだ。

「そうですね…まずは…卒業ですかね。」
「卒業?誰が?随分メンバー減ったのに、まだここから卒業させるの?」
「ええ。そうです。」
「卒業かぁ…考えてなかったなぁ。」
永田が腕を組んで考え込むような表情を見せる。

「そう…卒業です。
【この支配からの卒業…】
何かの歌の歌詞にありましたよね。」

指原がテーブルの上にリモコンのスイッチを置いた。


楽しかったな。ん?楽しかった?結構辛い事ばっかのような気がしたけど。
でも、やっぱ楽しかったのかな。

最後にもう一回大分に帰りたかったな。
別府湾から登る朝日、由布岳の向こうに沈む夕日。もう一回見たかった。
鳥天、やせうま、あとおばあちゃんが作った団子汁…もう一回食べたかったなぁ。

小森…大丈夫かな?きっと島では耐えられないと思って、最初に勝ち抜けするようにしたけど…
でも前田さんには悪い事しちゃったけど…。
ゆきりん、まゆゆ…なっちゃん…きっと、今頃は天国でみんなと仲直りしてるよね?
萌乃から訳聞いて、許してくれてるかな?
指原怒られるのイヤなんで…なっちゃん怖いし…

わかにゃん…あとはお願いね。
指原、わかにゃん推しって嘘じゃないからね。
みんなと…自分たちの力で、新しいAKBを…お願いね。

秋元が、高井が、永田が、立見が、河合が…慌てふためく姿が見える。
まるでスローモーションだ。

怖くない。穏やかな気持ちだ。
バンジー飛ぶときもこんな穏やかな気持ちだったら、飛べたのにな。

指原は笑った。
静かにリモコンのスイッチを押す。

眩い閃光が指原の笑顔を包んだ。
どんなステージよりも鮮やかなスポットライトのように。

63.本当の黒幕



「ようこそ~。歓迎するよさしこちゃん。」
「ちょっと里歌ちゃん。未だにその言い方するのはアンタくらいだよ?」
「だって、なんかこっちの方がしっくりきてさ。その子だってちょっと前までそう呼んでたじゃない。」
「でも、一番イイ子が残ったんじゃない?だって、アイドルヲタクなんでしょ?指原さんって。
私達と一緒にここで世の中を動かすのは堪らないでしょ?」
「そうですね。ルリ子さん。自分でアイドルやってみましたけど、
やっぱり私はアイドルを追っかけてる方が性に合ってるみたいですから。」

指原は勧められた椅子に座って笑った。

「しかし…見事としか言いようがないわね。私達の事や円卓会議のメンバーは誰から聞き出したの?
まさか…あなたじゃないでしょうね?」
「いや…それは違う。私は決して…」
「秋元先生からじゃないですよ、奥さん。」
「あら、ここでは奥さんって呼ばなくていいわよ。もう、あなたはここのメンバーなんだから。
麻巳子って呼んでもらっていいわ。」
「はい…じゃ、麻巳子さん。島を出る時板野さんに教えてもらいました。
あの3人は知ってたんですね。皆さんの事も。何もかも。」
「3人って?あの島に残してきた3人の事?板野さんと宮崎さん、河西さん。
そう。こっちで働いてもらう時にね。でも…あなた…3人はちゃんとコントロールしたって言ってたわね?」
「もちろんだ。ちゃんと薬漬けにしたし、例の仕掛けだって…」


指原は板野の事を思い出していた。
別れ際、虚ろな目を懸命に見開いて話してくれた事を。
自分の腕を爪で掻きむしった痛みで必死に正気を保ち教えてくれた事を。
「お願い…私達の悔しさを…」

わかってます。もうちょっと…もうちょっとで終わります。
みんな…最後の勇気を私にください…

「そっか…ま、いいや。終わった事だしね。
それより…なんであなた達には仕掛けが効かなかったのかな?」
「私、注射嫌いなんです。」
「注射?空港で予防接種を受けなかったのか?」
「はい。トイレに逃げてました。ハワイ行くくらいで予防接種もないよねって。
萌乃もああ見えて注射嫌いだって言うし、わかにゃんも小森も。」

「戸賀崎からは全員打ったと報告が…」
「だから言ったじゃない。あの男は肝心なところでポカをやるって。」
「すまない…戸賀崎め…」
「じゃあ、機内で意識は失わなかったんだ?」
「はい。だから…みんな聞いちゃいました。気を失ったフリって難しかったですけど。
小森がどうしよどうしよ…ってずっと言ってたんで殴ったりしなくちゃいけなかったし。
なんか運ばれてる時にガスか何かで眠らされちゃうまで…」
指原が苦笑した。

「注射液の中には超小型のチップと遅効性の睡眠薬が入っていた。催眠ガスは麻酔薬だよ…
それで眠らせてる間に体内に仕込んだ第2のチップがこちらの指示で反応して
心臓発作を起こさせるはず…そうか…最初のチップが入って無かったからお前たちは…」
秋元がつぶやく。ようやく納得した表情だ。

「だから…一番先に意識を取り戻した私は、萌乃達を起こして一旦みんなの前から姿を消したんです。
このゲームを勝ち抜くために…」
「大したものだわ。ヘタレ…そんな言葉は似合わないわね。もう。」
高井の言葉に指原は笑みを返した。

62.ステージの上に


「そっか…萌乃は…私達の為に…」
「いや…きっと死んでったみんなの為かも。」

宮澤が泣きじゃくる名取から話を聞き目を閉じた。
梅田も天井を見上げ大きくため息をつく。
見慣れた劇場の天井が滲んで見えた。

「指原さんも…今、向かってます。」
「やっぱり、私達も一緒に行くべきだったんじゃ…」
「ダメです…宮澤さん達は…まだ危険ですから。いつ心臓を止められるか…」
「そうだけど…指原、怖がってないかな?アイツ一人で。」
「大丈夫です。ああ見えて指原さん、言われてる程ヘタレじゃありませんから。」
「そうだね…それはもう誰もが認めてるよ。」
梅田が名取の方を見た。涙が頬を伝う。
上を向いていたのは、涙がこぼれないようするためだったようだ。

「でも…私達3人…あと、小森さんがあの人たちの仕掛けをかけられずに済んだのは
指原さんがヘタレだったからですけどね。」
「ああ…そうだったね。聞いた時は思わず笑っちゃったけど…でも…
その為にこんな役割を担わなくちゃならなくなったなんて。」

「私たちがやらなきゃいけない事も…多いね。」
宮澤がつぶやく。
「はい…でも…きっと、みんな変われると思います。いがみ合い、憎しみ合う事の悲しさを…
身をもって知ったんですから。変わらないと…死んでいったみなさんに顔向けができませんよ。」

「わかにゃん…強いね…」
梅田が名取の肩を抱きながら言う。
「いえ。私は、頼まれただけですから。指原さんと仁藤さんに…」

「よし。まずはレッスンだ。戻るよ。このステージの上に。」
宮澤が立ちあがった。

61.仁藤萌乃の最期



13人の奇跡の生還は日本中…いや世界中に大きな話題として取り上げられた。
マスメディアは戻った13人に大きなスポットを当て、失踪中のサバイバルの様子をこぞって聞こうとした。しかし、メンバーは多くを語る事をしなかった。極限状態の出来事だろうという配慮と多くの仲間が帰らぬ人となった事への同情心から失踪中の事を根掘り葉掘り聞こうという風潮はすぐに消えた。その分、メンバーへの関心度は極めて高くなった。予定していた追悼シングルは取りやめになり、暫くは表立った活動は控える事がアナウンスされたが、メディアから13人の姿が消える事はなかった。

「終わってみるとあっけないものでしたな。」
「まあ、最後の最後で見せ場らしいものがあったからな。」
「エースとしては、もっと血を血で洗うような展開を期待したのでは?」
「いやいや、なかなか面白いものを見せてもらったよ。満足しているよ。」
「これでこの会議も最後だと思うと少々寂しいものがありますわね。」
「まったくだ。」

ばたん

「誰だ?」
突然開いたドアにサングラス姿の一同が振り向いた。

「失礼します。はじめまして…って挨拶した方がいいんでしょうか?」
仁藤が部屋に入り言う。鋭い眼光が薄暗い中光る。
「仁藤…指原…それから名取…か。どうしてここが?」
「まぁまぁ。いいじゃないか。どうした?何か用か?」

仁藤が一枚の紙を目の前に掲げる。
「これ…島で書いた例の契約書です。5億の借金…この若さで背負う金額じゃないですよね。
まったく…返すあてなんてとてもありませんよ。」
「しかし…君たちはサインしたじゃないか?」
「あの場ではね。とにかく帰って来ない事にはどうしようもないでしょ?」
仁藤が笑って契約書を破り捨てる。

「あの…座っていいですか?」
指原がジャックの後ろに立ち見下ろす。
「なんだ?おい…今回のお前の活躍は我々も評価している。
次のシングルのセンターは指原、お前に任せようと考えてもいる。
だが…だからと言って、無礼な振る舞いは許さんぞ。私達を誰だと思ってるんだ?」

「ただの暇を持て余したつまんねー人間だろ?」
仁藤がテーブルの上に腰掛ける。ワインの入ったグラスが倒れ真っ赤な血のような液体がこぼれる。
「アンタ達の身体の中にも…こんな色の血が流れてるのかな?違うか…
きっと、どす黒い血が流れてるんだろうね。ね?さっしー。」
「ね?萌乃。私も見てみたいけど…私そろそろ行かないと。お茶の時間に遅れちゃう。」

「そうだったね。じゃあ、後で…向こうで会おうね。」
「うん。じゃ。」
「わかにゃん…頼むね。後は。」
「はい…仁藤さん…ありがとうございました。」

二人が部屋から出て行く。仁藤がテーブルに腰掛けたまま足を組みかえた。
「無礼にも程がある。いい加減にしたまえ。さもないと…」
「さもないと?どうしますか?」
エースに向かって話す仁藤の背後でジャックとキングが頷く。
テーブルの下に隠された操作盤のボタンを押す。

暫くしても何の変化を見せない仁藤に一同の顔に疑問の表情が浮かぶ。

「どうしました?暗くて良く見えないんじゃないですか?
サングラスを外して良く見てスイッチを入れたほうがいいんじゃないですか?」
「あの時も…名取は死ななかった。なぜだ?仁藤…お前は…お前らは…」

エースがゆっくりとサングラスを外す。
先ほどまでの柔和な表情は消え、老獪な笑みを浮かべる。

「殺れ…心臓発作の方が何かと面倒くさくはないが、やむをえまい。まあ一人くらいどうとでも出来る。」
4つの銃口が同時に仁藤に向けられた。

仁藤がテーブルの上に座ったままにっこりとほほ笑んだ。
「さっしー、先に行ってるよ。みんなのトコにね。」

ビルから出てきた指原と名取の背後で大きな爆発音が響いた。
二人は振り返る事無くまっすぐ歩いた。
細かく震える名取の肩を指原が優しく抱きかかえる。

「萌乃…すぐに行くからね。大丈夫、そんなに待たせないよ。
でも…みんないるから寂しくないよね…」

60.帰りましょう

60.帰りましょう


迎えにきた巨大な軍用ヘリコプターの中から戸賀崎智信が降りてきた。
板野友美、宮崎美穂、河西智美がそれに続く。
ヘリの後方格納部からタラップが現れた。そこから幾つもの棺が滑り降りてくる。
これまでに脱落していった者たちが入っている事は何となく感じ取れた。

「みんな、ご苦労だったな。ここにいる12名はこれから日本に戻る事が出来る。
勝者だけに与えられた特権だ。喜んでくれ。」
残った12名からため息がこぼれる。喜びの声はない。誰もが疲れ果てていた。

「ただし…一つだけ同意してもらわなくてはならない事がある。
きちんと同意書にもサインしてもらう必要があるから理解してくれ。」
板野から全員に一枚の紙が配られた。

「なんですの?この借入金5億円ちゅうのは?」
増田が戸賀崎に問い詰めるような口調で聞く。
「それか?交通費だな。ここから日本に帰るためのな。特別ルートだから何しろ高くてな。
それから、これからのお前らのマネジメント費も含まれている。でもな、優しいぞ運営は。
無利子しかも返済期限無しだ。こちらの言う通りしてる分には一切返す必要がないって事だ。」

「でも…それだど…どんな事でも言う事を聞かないといけないって事じゃないですか?それって…」
「ほう。なかなか頭がいいな、梅田は。
その通り、これからは24時間365日、全て我々の監視下において動いてもらう。
一切の不満は認めない。」

「あの…異常な環境下で結ばれた一方的に不利益な契約は
法律的に守らなくてもいいって事を聞いた事があります。
これは…余りにひどすぎます。それに該当するんじゃありませんか?」

「玲奈…死んだ秦の代わりをしてるつもりか?
そうだな…まともな契約ならそうかもな。いいぞ、それを破ってしまっても。
他にもサインしたくない者がいたら言ってくれ。遠慮はいらんぞ。
ところで…なぁ、さっき出てきた棺桶の数、妙に多いと思わなかったか?」

戸賀崎が棺の中から二つを開けた。
「れいにゃん?あやりん?なんで?勝ち残ったはずなのに…」
「二人は頑なにサインを拒絶したからな。残念な結果だ。さあ、お前らも構わないぞ。
補欠ならここに3人いるからな。」
増田は黙ってしまった。梅田も玲奈も…全員から言葉が消えた。

「それに、逃げようとかどこかに駆け込もうったって無理だぞ。考えてみろ。
なんでゲーム中にバトルに負けたヤツがすぐに心臓が止まるんだ?
お前らの身体の中にはちゃ~んと仕掛けがしてあるんだよ。ちゃんとな。」

「仕掛けって…そんなんハッタリや。戸賀崎さん、もうゲームは終わったんや。
アンタが黒幕やったんやな…そしたら…アンタを…」
増田が指原に飛びかかる。揉み合って銃を奪い取りそれを戸賀崎に向ける。

「やめとけ、増田。お前には俺は撃てない。」
「増田さん!ダメです。やめて…今はガマンしてください。お願い。」
指原が増田に言うがその耳には届いていないようだ。

戸賀崎は銃口に怯むことなく増田の方へと歩み寄った。
「ホンマやで…脅しとちゃう…ホンマに撃つで…」
戸賀崎は表情を変えずに増田の目の前まで進んだ。
「さあ。それをこっちへよこすんだ。さ…」

増田が目をつぶって引き金を引いた。乾いた銃声が響く。
「ま…増田…俺を…お前が…」
戸賀崎は膝をつきそのまま前のめりに倒れた。


「はぁ…は…はぁ…みんな終わったで…これで…帰れるんや…」
「有華…アンタ…」
宮澤が増田の肩を抱き、そっと抱き寄せる。

「う…なんでや…なんで…終わったはずじゃ…ぐっ…」
突然増田が胸を押さえて宮澤に寄りかかった。そのまま倒れ込む。
「有華!おい!ダメだよ。ねぇ。有華!私、まだアンタに謝ってない。
もう一回一緒にやりたいから…だからちゃんと謝らないといけないのに…
有華!戻ってきて…お願い…」

指原が増田の手から銃を取り立ち上がる。
「帰りましょう。とにかく…まずは。ここには辛い思い出しかありません…
板野さん…戸賀崎さんは死んじゃいましたけど…帰れますよね?」

板野が無言でヘリの方を指差した。

59.ゲーム終了


「ぐっ…ここまで…きて…」
胸を撃ち抜かれて倒れたのは秦だった。
手から銃がこぼれ落ちる。

「玲奈ちゃん…間に合った…よかった…」
「指原さん…」
秦が倒れた先には銃を構える指原の姿があった。
「もう…まだそんな呼び方してる。私たちタメ口で呼び合うって決めたでしょ?」
「あ…ごめん…さっしー…」

指原が大きなため息をついた。
スマホから大きなアラームが鳴り響く。

【16名が確定しました。ゲームを終了します】

指原は画面をちらっと見て、スマホと銃を地面に投げ出した。

「終わった…これで…帰れるのね?私たち。」
玲奈が放心した表情でつぶやく。指原が玲奈の肩を抱き身体を支える。

「ゲームか…これがゲーム?このままじゃ…」
「え?さっしー?どうしたの?」
「何でもないよ。玲奈ちゃん。ほら…お迎えが来たみたいだよ。」

遠くからヘリコプターの姿が近づいてくるのが見えた。
それを見つけた玲奈が大きく手を振る。
指原は唇をきつく結んでヘリの方向を睨みつけた。


<ゲーム終了>

勝ち抜け(4名)
小森美果、菊地あやか、大場美奈、藤江れいな

終了時生存(12名、終了時ポイント順)
指原莉乃、松井玲奈、宮澤佐江、増田有華、梅田彩佳
須田明香里、仁藤萌乃、大矢真那、矢神久美、木崎ゆりあ
木本花音、名取稚菜


合計16名

58.敵を欺くには味方から


「あと3人になりましたね…」
「長かったね。ここまで…」
「玲奈さん。まだ終わったわけではありませんよ。」
「お待たせ~何?話って。いい作戦でも浮かんだの?」
「しゃわこ、聞かせて聞かせて。」
珠理奈と高柳が笑いながら姿を見せた。4人は輪になって地べたに腰を下ろす。

「ええ…現在の勝ち抜けは4人になりました。脱落者は20人。
多くの上位メンバーがここに含まれています。
AKBグループの勢力地図は大きく塗り替えられました。
そして、今この島に残っていいるのは15人。ここから残りの枠は12…」
「つまり…あと3人誰かが脱落すれば…」
珠理奈が乾パンを頬張りながら言う。
「そうね、この味も素っ気もない食料ともおさらば出来るってことね。」
高柳の顔にも笑顔が浮かぶ。

「で?どうやるの?もったいぶらないで教えてよ~。早くぅ。」
「簡単な事ですよ。」
秦が銃口を珠理奈に向ける。
「ちょ…何、冗談やめて?そんなモノ…どこで?」
高柳もそれを見て表情が少し変わった。

「そっか…それで誰を殺るの?指原さん?宮澤さん?
ねぇ。しゃわこ、もう。危ないからそんな物騒なモノこっちに向けないで。ね?」
「ご心配なく。
バトルで死なない限り、あなた方が消えても他のチームメイトには影響はありませんから。」

「その銃…まさか玲奈ちゃん…?」
珠理奈が玲奈の方を向いた。玲奈は涙を浮かべ激しく首を振っている。

「なんでここまで、私が玲奈さんを中心にして事を進めてきたかわかりますか?
お二人より組み易し…そう見たからですよ。玲奈さん…すごくいい人。
何でも私の言う事を信じてくれたし。
万が一の為に武器を持っておきましょうって私の提案をすんなり受け入れて、
しかもその大事な銃を私に預けてくれた…」
「私は…しゃわこを信頼して…嘘でしょ?ね?」

「嘘?ええ。私は最初から全員で助かろうなんて思ってませんでした。
そういう意味では大ウソつきですね。私は。」
「玲奈ちゃん…なんで、こんなヤツに銃なんて預けたの?」

「珠理奈さん、今更玲奈さんを責めるのはお門違いですよ。
あなたはスゴイ人です。才能あって努力もしてて。でも…まだまだお子様ですね。
玲奈さんのする事なら…玲奈さんが信用してる秦の事なら…安易に人を信じすぎです。」

秦が引き金を引いた。珠理奈が倒れるのを確認する前に今度は高柳に銃口を向け引き金を絞る。
逃げだそうとする高柳の背中に銃弾を与えた。
「ちゅりさん…あなたは、周りが見えな過ぎです。
熱くなるのはイイけど、時には冷静に周りを見渡す視野を身につけないと…
そういうトコは嫌いじゃなかったですけどね。でも…いいリーダーでしたよ。今まで…」

玲奈はもう逃げ出す事すら…いや、立ってる事すらできなかった。
がくがく震えながら秦の事を見つめている。
「最初から?最初から私たちを?」
「いえ…私もそこまで冷酷ではありません。
全員で生き残れればそれが一番いいと思っていました。ここに来るまでは。
ですが…この展開の中、最後は土壇場で力技が必要だと読んでもいました。
誰かを欺く事が必要だとも…
それなら…人を欺くには、敵より身内の方が欺きやすい…ただ、そう思っただけです。」

「そして…それは…正解だったって事?」
秦が静かに微笑んだ。玲奈が諦めたように目を瞑る。

銃声が鳴り響いた。

57.リターンマッチ


「やっぱ来たね。待ってたよ。」
篠田麻里子が忍び寄ってくる藤江れいなの姿を見つけ声をかける。
「ばれてました?こっそり襲っちゃおうかなって思ったんですけど。」
藤江が方をすくめて笑う。
「正々堂々と…って事でいいんだよね?」
「ええ。あの時の借りは返しますよ。」
「でも…なんで?ここまで残ったのに。もうちょっと我慢してればゲームも終わる。
そしたらアナタは残れるじゃない?」
「う~ん…覚えてます?あの時、司会の福澤さんが言ってましたよね?
皆さんは人生をかけたじゃんけんをした事がありますか?って。
スゴイいい事言うなぁって思ったんですよ。人生をかけたじゃんけんかぁ…って。
でも…私はそこまでの覚悟がなかった。最後麻里子さんに負けた時、私笑ったでしょ?
でも、麻里子さんはスゴク泣いた。きっと覚悟が違ったんですよね。
だから…今度こそ…これは本当に人生をかけたじゃんけんなんです。」

「そんな事で意地張らなくても。」
「それに…友達も死んじゃいましたしね。私一人でって言うのもなんか…」
「はるきゃん?」
「だけじゃないですよ。こんな風に憎しみあって勝ちとった先に何があるのかなって…
あ、違いますよ、だから負けようとかそんなんじゃないですよ。
なんていうか…上手く言えないなぁ…う~ん…」

「ははは。わかった。いいよ、受けて立つ。
もっとも、私は拒否できない仕組みみたいだしね。
ところで、れいにゃん…誰かとチーム組んでないの?もし、アナタが負けちゃったら…」

「大丈夫です。さっき宮澤さんには解散してもらってきましたから。
ここまでずっとお世話になってきたんです。ユニットの時もここに来てからも。
DiVAのみんなと仲たがいをしても、私の事を守ってくれた…
だから…私が勝てば、宮澤さんへの恩返しになるかなって。
知ってますよ、麻里子さん。すーちゃんと組んでるでしょ?
ここで私が勝てば一気に二人減るんだから。それに負けても…それはそれで恩返しになるでしょ?
私みたいな足手まといが減るんだから。」

「そっか…佐江か…意外な組み合わせだね。いつの間に?」
「麻里子さんだって意外ですよ。すーちゃんと…なんて。
あの…そろそろおしゃべりはやめませんか?」
「そうだね…じゃ…やろうか?」

篠田と藤江が向き合った。お互いスマホを向け合う。

≪タダイマノバトル、ショウシャ、フジエレイナ。ハイシャ、シノダマリコ。≫

「やられた…よ。今度はれいにゃんの方が…覚悟が上…」
篠田が胸を押さえて倒れ込んだ。
「ごめんなさい…麻里子さん…」
「すーちゃんに…謝れなかったな…最後…に」
そこまで言うと篠田は動かなくなった。
藤江の目から涙がこぼれ落ちる。あのときの篠田のように。
だが、違うのはそれが歓喜の涙ではなかった事だ。
藤江は拳を握り身体を震わせた。顔には沈痛な表情があった。




ここまでの勝ち抜け(4名)
小森美果、菊地あやか、大場美奈、藤江れいな

脱落者(20名)
前田敦子、秋元才加、石田晴香、高橋みなみ、小嶋陽菜、峯岸みなみ
倉持明日香、高城亜樹、大島優子、北原里英、横山由依、島田晴香
山本彩、多田愛佳、前田亜美、柏木由紀、渡辺麻友、平嶋夏海、
篠田麻里子、佐藤すみれ


残り15名 (残り枠12)

指原莉乃、仁藤萌乃、名取稚菜、宮澤佐江、
増田有華、梅田彩佳、松井玲奈、
松井珠理奈、高柳明音、須田明香里、大矢真那、矢神久美、
木本花音、木崎ゆりあ、秦佐和子

56.謀反の兆し


「あの…しゃわこ…ちょっといい?」
大矢真那と須田明香里が秦に小声で話しかける。
矢神久美、木崎ゆりあ、木本花音も辺りをうかがいながら話の輪に加わった。

「はい…?なんでしょう…?」
「あのね…今残り18人でしょ?もし…もし、このまま誰も消えずにゲーム終了になったら…
ポイントの上の人から順に生き残りが決まるんだよね?」
大矢の声が段々大きくなる。
「そうですね…ルールではそうなっていると思います。」
秦の口調は変わらない。いつもと同じ…消え入りそうな声だ。

「そしたら…私たちの中から…今まではチームで守られてたからいいけど、
単純にポイントの比較だったら私ヤバいもん…花音とか…しゃわこ、あなたもでしょ?」
木崎が言う。木本も泣きそうな顔で頷いている。
「おっしゃる通りです。私たち全員が生き残る為には…
誰かAKBの方に消えて頂かなくてはなりません。」
「ね…?いいのかな…私たち、このままで…」
「このままでって?どういう事、あかりん…?」
須田の言葉に矢神が尋ねた。

「いや…あれだけAKBの上位メンバーがいなくなったのに、
SKEは何も変わらないのかな…って。
誰かが言ってたよね?ちゅりだっけ?いつまでも支店なんて言わせないって。
でも…このままだと、結局私たちの中の位置関係は変わらないままじゃない?」
「あかりん…ひょっとして…3人の事を言ってる?」
大矢の問いかけに須田が黙って頷く。

「そっか…あかりんさん…やっぱもっと上に行きたいんですね。
そのためにスゴイ努力してましたもんね。」
木本が須田に向かって言う。

「みなさんは…どうお考えなんですか?」
「そりゃあ…ねぇ…?」
「うん…でも…」
秦の問いかけにメンバーの間からはっきりしない答えがこぼれた。
「私ははっきり言うよ。玲奈さん、珠理奈さん、ちゅりさん…
3人を…やっちゃいましょう。今世代交代しなきゃ…チャンスは二度と来ない。」
須田がきっぱりとした口調で言った。

「わかりました。方法は…私が考えます。」
秦が須田の方を向いて言った。もう弱弱しい口調ではなかった。

55.円卓会議⑥

「なぜだ?なぜ、バトルに負けた者の心臓が止まらない?」
「そうだな…確かにおかしい。指原と仁藤の演技はこちらでも理解できた。
実際にバトルが行われなかったのを上手く誤魔化したのはアカデミー賞ものだ。しかし…なぜ名取が?」
「システムのトラブルでしょうか?」
「いや…そんなはずは…それに、この作戦…
最初から三人がバトルに負けても死なないと解って仕組まれたとしか思えませんわ。
一体どんなトリックを使ったというのかしら?」
「しかし、これは我々の設定したルールを逸脱してはないか?」
「これは…私達の手でペナルティを与えるべきではないでしょうか?」

「いや…あっぱれじゃないか。柏木達だけでなく、私達まで欺くとは。
その素晴らしい演技力とこのトリックに免じてここは不問にしようじゃないか。」
「エースがそうおっしゃるなら…私には異存はありませんわ。」
「そうですな。このトリックの種明かしを聞くためだけでも、生かしておく価値はあるかもしれませんな。」
「では…指原はどう扱いますか?本来勝者は勝ち抜け…というルールですが。」
「そのまま残しておいて構わんだろう。名取の事を不問にするのだしな。
それにどうやら、本人も勝ち抜けを望んではいないだろうしな…。迎えに行く板野に確認させるが…」
「そうですね。その方が楽しそうだ。」


「では…ここで消えたのは3人だけ…残り18人ですか。もう少しですな。」
「溜まりませんな。この緊迫感。」


ここまでの勝ち抜け(3名)
小森美果、菊地あやか、大場美奈

脱落者(18名)
前田敦子、秋元才加、石田晴香、高橋みなみ、小嶋陽菜、峯岸みなみ
倉持明日香、高城亜樹、大島優子、北原里英、横山由依、島田晴香
山本彩、多田愛佳、前田亜美、柏木由紀、渡辺麻友、平嶋夏海


残り18名

篠田麻里子、指原莉乃、仁藤萌乃、名取稚菜、宮澤佐江、
藤江れいな、佐藤すみれ、増田有華、梅田彩佳、松井玲奈、
松井珠理奈、高柳明音、須田明香里、大矢真那、矢神久美、
木本花音、木崎ゆりあ、秦佐和子

54.トリック



胸を掴みながら指原が苦しみ始めた。少しだけ微笑む。
静かに目を閉じその場に崩れるように倒れる。
「指原さん!指原さん…!さし…は…」
名取が指原の身体を激しく揺する。返事は返ってこない。

「終わったよ…終わりました。」
仁藤が小さな声で言う。
「さすがだね。イイ表情だよ、萌乃。約束は守るよ。
その研究生を私達のチームに入れてあげる。わかにゃん…だったね。」
柏木がスマホを操作する。名取がチームに加わった。
名取が仁藤の方を向き確認するように頷く。

「すみません。ポイントを確認させてもらいます。」
名取がスマホを操作しながらその場から少し距離を取る。
「同じチームになったからって、私達と対等って思ってもらったら困るからね。
何でも言う事聞いてもらわないと…」

「ええ。解ってますよ。もちろん。でも…私達は運命共同体には違いないですよね。
渡辺さん、柏木さん、平嶋さん?。」
名取がスマホの画面を三人に向ける。


≪タダイマノバトル、ショウシャ、サシハラリノ。ハイシャ、ナトリワカナ。≫

渡辺が笑顔のまま凍りついた。柏木もその場に立ち上げる。
「なんで?どうして…さっしーは…ぐっ…がっあっ…」
渡辺が胸元をかきむしる。柏木も信じられないような表情のまま倒れる。
「わかにゃ…なんで…あなたは…平気な…の…」

遠ざかる意識の中、3人は見た。
バトルに負けたはずの名取が沈んだ表情ながらも平然と立ち続ける姿と、
指原がゆっくりと起き上がる姿を。

柏木と渡辺、そして平嶋が動かなくなるのを見て、3人はその場を後にした。

53.指原の決心


「おやおや~久しぶりじゃないですか。さっしーに萌乃ちゃん。あと…
研究生のわかにゃん…だっけ?何か用?」
渡辺は柔らかい表情で指原を見る。手には鈍く光る銃がある。
銃口はまっすぐに指原の方に向けられている。

「あのね…お願いがあるの。聞いてくれる?」
「さっしー。お願いする時は口の利き方に気をつけないと。」
柏木が笑みを浮かべながら指原に語りかける。
「萌乃ちゃんも。そんな怖い顔で睨んでないで。」
そう言って笑う渡辺の横では平嶋がこわばった表情で立ちすくんでいる。

仁藤と指原は膝を地につけ頭を下げた。
「お願いします。どうか…私達を…助けてください。
仲間に入れてください…お願いします。」
仁藤が額を地につけ懇願する。初めて見せる仁藤の姿だ。

「あれあれ~。まさかの土下座ですか。仁藤さんがねぇ。
ジャックナイフと言われた萌乃様が私達に土下座をねぇ。」
「何とでも言ってください…」


「そうだね~。さて、どうしましょ?あのね…ここにいるなっちゃんは、
あやりんが命がけで助けて私たちのチームに入れてもらえたんだよね~。
そんな修羅場をくぐり抜けてきた人がいるチームに何の苦労も無しで入るっていうのはねぇ。」
渡辺が立ちあがって2人の前で中腰になる。

「もちろん…ただでとは言わない…。」
指原が立ちあがった。
「今から私と萌乃がバトルをする。そして…私が負けます。
ゲームも終盤…あなた達に近いポイントを持ってるのは私とせいぜい麻里子さまくらい…
ここで上位の私が消える事はお二人にとって悪い話ではないと思いますけど?
もし、私と麻里子さまとそうですね…佐江ちゃん辺りが組んだら…
二人にとって結構面倒くさい存在になっちゃうと思いますし。
私…もう疲れたんです…早く楽になりたい…」


「それが…手土産ってことね?いいでしょ。でも…アナタ達3人、チームは組んでないの?
一人がやられたら他も死んじゃうんだよ?」
柏木が指原に念を押すように聞く。
「さっき…チームは解散させました…もう覚悟は出来てるんです。」

渡辺と柏木が少しだけ表情を変える。目を丸くしていた。
確かに悪い話ではない。いや…むしろ歓迎すべき提案だ。
しかし…なぜ?自分が犠牲になってまで二人を助けたいのか?
三人が共倒れになるより、二人が生き残れば…という考えか?
そんなにあの3人の結束って固いのか?

ま、いいだろう。勝ち残った萌乃も名取も、いざとなったら銃でやればいい…
余り気持ちがいいものじゃないから、あれ以来使ってはないが。

「ま、いいでしょ。じゃあ、私達はここで高見の見物といきますか。」
渡辺が銃口を下げ引きさがる。

「いい?いくよ、さっしー。」
「うん。分かった。」
「指原さん。本当にごめんなさい…」
「いいの。後は宜しく…ね。」

お詫び

実は、先ほど3話程UPしたのですが、もう一度読み直してみた所、幾つか書きなおしたい部分というか、
明らかにおかしい部分がありましたので慌てて削除いたしました。
「あれ?おかしいじゃん!」って思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

本当にすみません。

で…記事を消してしまおうと削除ボタンを押したときになって、すでにコメントを頂いてる事に気づきました。
慌ててコメントを読もうとブラウザの戻るボタンを押したのですが、間に合わず…

恐らく、「話がおかしいやんけ?」とのお叱りのコメントじゃないかと思うのですが、読むことが出来ませんでした。
コメントをいただいた方、本当にすみません・・・・

今から改めてUPします。
削除したものを読まれた方…コメントを頂いていた方、もう一度お詫びを申し上げます。

本当に申し訳ございませんでした。



もう結構な数の方が読まれてしまっていると思うのですが…
いや…やっぱりこういう複雑な話を下書き無しで書き進めるのはイカンですね。

深く反省しております…


52.最終局面へ

「おかしいと思いませんか?」
「しゃわこがそう言う時って、何かに気付いた時だよね。
もうわかってきちゃった。今度は何?」
「玲奈さんにはかないませんね…」

「最初に勝ちぬけた小森さんや菊地さんが居なくなってもう1週間過ぎましたよね?
ほら…このネットの記事見てください。」
秦がPCの画面を指差す。

【AKB48主要メンバー 捜索活動が終了 全員が絶望視】
【私たちは運命に立ち向かう~残されたメンバーで追悼シングルを発売】

「私たちは次のシングルの選抜を目指して戦わされてる…はずでしたよね?
この遭難事故から奇跡の生還を果たしたメンバーで…というインパクトを与える為には、
この時期に追悼シングルを発売する…その意味がわかりません。」

「秋元先生は、この件と関係ない…って事?」
「カモフラージュかもしれませんね…それとも、そもそも私たちを戻すつもりがないとか。
勝ち残った3人も、果たしてどうなってる事か…」
「あのさ…実は、この島に送り込まれたのって、最初から切るつもりだったんじゃないのかな?
変な言い方だけど、今まで売れてたメンバーが多いでしょ?
秋元先生言ってたよね。批判されてもAKBを再生するって…」

「わかりません…ただ…」
「ただ?]
[ゲームの終わりは近い…それは確かです。」
「本当に?」
「ええ…あと8人が脱落すれば…そこで16人が確定します。」

「私たち…全員が残れる可能性はあるんだよね?」
「それには…私たち以外から8人を落とす…
今までは大人しく様子を見てここまで残ってきました。
ですが、そろそろみなさん気づいてるはずです。
逆に私たちがまとまって消えると、それだけ自分が勝つ可能性が高くなる…」

「って事は…」
「もう、そろそろ待ちだけではダメだって事ですね。」




51.3人がやらなくちゃならない事



浜辺には山本彩と前田亜美そして多田愛佳が横たえられていた。
山本は貯蔵庫の前で冷たくなっているのが、
食料を補給に来た玲奈と木崎によって発見された。
残ポイントはゼロであった。
前田と多田の遺体は居住地から遠く離れた島の反対側にあった。
発見したのは、指原と仁藤萌乃だ。二人はこの数日、姿を消していた。
ポイントはゼロではなかったが、すでに水も食料も手に入れる事が
出来ない程しか残されていなかった。

「私たちが…殺したようなもの…いや、私たちが殺したんだ。」
指原が多田の遺体の横にひざまずき呟いた。
「仕方ない…仕方ないんだよ。さっしー…」
仁藤が指原の肩に手置き慰めるように話しかける。
「もう…もう嫌だ。ねぇ…萌乃…私、こんな思いまでして生き残りたくない。
お願い…ひとおもいに…」
「ダメです。指原さん…私たちには…3人で決めたじゃないですか。
私たちにはやらなくちゃならない事が…」

名取の言葉に指原は頷いたが、その目には涙が溢れ、身体は小刻みに震えていた。
ゆっくりと多田の手を取り、その両手を胸の上で組ませた。
前田の身体は仁藤が直してやった。

「愛ちゃん、亜美…ちょっとの間だけだからね。待ってて。
みんなと一緒に待ってて。指原もすぐに行くから…」



ここまでの勝ち抜け(3名)
小森美果、菊地あやか、大場美奈

脱落者(15名)
前田敦子、秋元才加、石田晴香、高橋みなみ、小嶋陽菜、峯岸みなみ
倉持明日香、高城亜樹、大島優子、北原里英、横山由依、島田晴香
山本彩、多田愛佳、前田亜美


残り21名

柏木由紀、渡辺麻友、平嶋夏海、篠田麻里子、指原莉乃
仁藤萌乃、名取稚菜、宮澤佐江、藤江れいな、佐藤すみれ
増田有華、梅田彩佳、松井玲奈、松井珠理奈、高柳明音
須田明香里、大矢真那、矢神久美、木本花音、木崎ゆりあ、秦佐和子




50.チーム4の覇権


「美奈!そんなトコにいたの?探したよ~。」
「晴香?どうしたの?そんな血相を変えて…」
「あのね…優子さんがね。私たち二人をチームに入れてくれるって。
だから…行こ?優子さん、待ってるから。ね。」
「ホントに?私と晴香…二人を?」
「うん。だから…はやく行こう!」
大場に背を向けて駆け出そうとした時、島田のスマホのアラームが鳴った。

【大場美奈さんからバトルの申込がありました。
下位者からの申込なのでバトルが確定します】

「美奈…なんで?どうして…?」
島田の顔に困惑の表情が浮かぶ。
「やっぱり、私の方が下だったんだね。」
大場が薄笑いを浮かべる。

「どうして?どうして…私たちが戦わなきゃいけないの?」
「晴香…アンタが悪いんだよ。大体、あの時大人しく落ちてれば…
こんなトコに来る事もなかったのに。せっかく…せっかく上手く騙したのに。」
「あの時って…騙したって…?」

「まだわからないの?あのね…私にとって一番邪魔なのは、晴香…アンタなんだ。
私はもう正統派アイドルなんて目指せない。あんな事があったからね。
なら、どうすれば私が生き残っていけるか…
逆境に打ち勝ってチームの為に奮闘する…そんなキャラしかないじゃない?
同じキャラはふたりいらない…私が生き残っていくって事はアンタが居なくなる…それが必要なんだよ。」

「そんな事ない!だって美奈なら。アンタならまだ幾らでも…」
「そんな綺麗事は言ってられないんだ。晴香…アンタにわかる?
一寸先も見えない中、外にも出れず部屋で悶々とする毎日がどんなに辛いか。
今の方がよっぽどマシ。勝てば…勝てさえすればいいんだから。どんな手を使っても。」
島田と大場が正面から向き合った。



「どこ行ってはるんですやろ?」
「早く戻って来ないかなぁ。私、お腹すいてきちゃいました。」
「あや~。北原さん、お腹空いたら不機嫌にならはるから。」
「ははは。もうちょっと待とうよ。」
大島が青い空に向かって大きく背伸びをした。

「ぐっ…が…っ…」
急に胸を押さえて苦しみ始める。
「優子さ…うっ…う…」
北原と横山も胸を押さえて地面に倒れ込む。
「ま…まさか…晴…香…が」



大場は暗い表情で足元に倒れた島田を見つめていた。
晴香…私は謝らないよ。生き残った方が棘の道なのかもしれないから…

「お迎えにあがりました。」
ヘルメットを小脇に抱えた宮崎美穂が大場に声をかけた。


ここまでの勝ち抜け(3名)
小森美果、菊地あやか、大場美奈

脱落者(12名)
前田敦子、秋元才加、石田晴香、高橋みなみ、小嶋陽菜、峯岸みなみ
倉持明日香、高城亜樹、大島優子、北原里英、横山由依、島田晴香


残り24名

49.大島優子の思い


数日は何事もなく時間だけが過ぎていった。
一部の人間が武器を持ったらしい事、チームを組む事が決してメリットだけではない事がわかった事でメンバー間の牽制が生じ誰も動きを取る事が出来ない膠着状態が生まれていた。また、ポイントが日々減少していく事も分かってきた。その減り方が一定でない事がメンバーに言いようのない圧迫を与えていた。メンバーの多くは殆ど睡眠をとることも出来ない緊張状態を強いられる上、ポイント数が少なく、チームも組めないままのメンバーは極限の精神状態に追い込まれていた。

「どうした?晴香。目の下、クマ出来てるよ。」
大島優子に声をかけられて島田ははっと顔を上げた。
緊張が過ぎると人間は意識を失ったような状態になってしまうらしい。
「優子さん…優子さんは大丈夫ですか?」
「お?何?心配してくれてるんだ。ま、大丈夫だよ…って言うのは強がりだけどね。
でも、まあ強がれるだけまだ元気ってことかな?」
「優子さん…私…もうダメかも…」
島田の目から大粒の涙が零れ落ちた。肩を震わせて泣き始める。
大島は黙ったまま島田の身体を抱き寄せた。

「落ち着いた?いいよ。たまには泣かせてやるからさ。」
「はい…もう大丈夫です。ありがとうございます。」
「あのさ…話があるんだ。私たちとチーム組まないか?」
「え…?私がですか?」
「そう。私と由依と里英。指原も誘ってNot yetで…って思ったんだけど、
アイツ頑なに拒否しやがってさ。だから…晴香と美奈…二人を誘おうかなって。」
「私と大場ですか?嬉しいです…でも…私たちでいいんですか?」
「正直、余りいい気はしないんだ。こんな事言うのって。
まるで自分が誰か救う人間を選んでるような気がしてさ。
でも…二人は残るべきだと思う。生き残って…何かを変えて欲しいんだ。」
大島がスマホの画面を操作する。島田がチームに加わった。

「ありがとうございます。早速大場にも…」
「そうだね。でもその前に何か食べな。ここのところまともに食べてないだろ?
チームになったんだから、私たちのポイントである程度マシに食料は摂れるから。」
「あ…はい。でも、やっぱり大場に早く知らせてあげたいので。
多分、近くに居ると思います。ちょっと探してきますので。」

島田は大島にぺこっと頭を下げて駆け出した。
アイツらしいな。自分の腹を満たす前に仲間のところへ走るなんて。
大島は笑った。やはり、島田を仲間に引き入れて間違いはなかった。

48.フレンチ・キスとの決別


「お手柄お手柄。いやいや、まさか3人も始末してくれるとは。
あの忌々しい初期メンをね。あ、ごめん。なっちゃんも初期メンなんだよね?忘れてたよ~」
渡辺が手を叩いて喜ぶ。

「じゃあ、なっちゃん。約束通り私たちのチームに入れてあげるね。
嬉しいでしょ?しかし、きくぢもやるよなねぇ。大したもんだ。」
柏木が画面を操作する。
「えっと…チームっと…平嶋夏海…ね。」

「これでちょうど5人だもんね。」
倉持明日香がスマホを取り出した。
「あれあれ?それって都合が良すぎませんかぁ?
あやりんは、命がけでなっちゃんを守ったんですけど?あなた達二人だけ美味しい思いするって…
それはないんじゃないですかねぇ。」

「え…どういう意味?ね?ゆきりん…私たちは仲間だよね?]
高城が柏木の手を取ろうとする。

「そうね…チームが運命共同体って事がわかった以上、
単にくっつくだけだとリスクしか生まれないもんね。ね、もっちーもそう思うでしょ?」
柏木が高城の手を振りほどいて言う。笑顔を浮かべたままだ。

「どうします?お二人さん…。もし…どちらかが何かお土産持ってきてくれるなら…
喜んでチームに入れてあげますけど?」
渡辺の言葉に倉持が立ち上がる。表情に怒りがこみ上げてきた。

「そんなの…こっちから願い下げよ。私は自分の力で…あなた達を倒す。
まゆゆもゆきりんも私より上位者だよね…だったら…」
倉持がスマホの画面を見ようとした瞬間だった。

パン!パン!
2発の乾いた銃声が鳴り響いた。

「ダメだよ~もっちー…ヤケおこしちゃ。バトルなんて…させるわけないじゃない?
私たちが。ねぇ…なっちゃん?」
柏木の笑顔に平嶋が引きつった表情を返した。

これがあの柏木か…アイドルの中のアイドルと言われた柏木の姿なのか…
倉持と高城の死体を冷たい表情で見下ろす柏木の姿を見て、平嶋は背筋が凍る思いがした。
戦争を勝ち抜くために、人間はここまで冷酷になれるのか…


47.さらばノースリーブス



「小嶋さん…ちょっといいですか?」
「ん?どうしたの~あやりん。あ、チョコレート食べる?
私たちチーム組んだから食料も水も結構余裕あったりするの~。
あやりんはまだ誰ともチーム組んでないの?」
小嶋陽菜が明るく言う。この人くらいだな…ここに来ても変わらないのって。
でも…いつまでそんな平然とした顔でいられるのかな?

菊地はスマホの画面を操作する。
【バトル】→【選択】【相手を指名してください】→【小嶋陽菜】
小嶋の画面に文字が浮かぶ。
【菊地あやかさんからバトルの申込がありました。
下位者からの申込なのでバトルが確定します】

「あやりん~何い?私とバトルするの?なんで?」
小嶋はチョコレートを口にくわえながら目を丸くする。
どこまでも喰えない女だ。本当に何も考えてないのか…それとも…
「とにかく…バトルは確定したんです。
私は…勝たなきゃ生き残れないんだ…それに…なっちゃんも…」

平嶋は自分が戦うと言ってきかなかった。自分が勝ってあやりんがチームに入れてもらえばいいって。私はダメだって答えた。それにどっちにしてもどこかで生きるか死ぬかの勝負をしなくちゃダメなんだ。それが今なんだ。大丈夫。きっと修羅場での勝負強さは私の方が上だから…菊地は平嶋の背後から鳩尾のツボを一撃した。ちょっとだけそこで休んで待っててね…

「じゃあ、小嶋さん…用意はいいですか?」
「あやりん…残念だけど、この勝負…意味がないよ。」
菊地のこめかみに冷たい物が突きつけられた。
高橋だった。高橋が冷たい銃口を菊地に突きつけていた。

「バトルを始める前なら見逃してやったのに…もう仕方ないよ。
あやりん、あいこだ。あいこにして。スマホの説明画面で確認したの。
あいこなら一旦バトルは終了する、じゃなきゃ…撃つよ…?」
「わ…わかりました…」
「じゃあ、私はパー出すからね。あやりんもパー出してね~。」
小嶋が笑って言う。そうか…これがあるからあの余裕なのか…
「じゃ、始めるよ~」

【バトル1.デジタルじゃんけんを行います。何を出しますか?】
菊地が悔しげに画面をタッチする。小嶋は笑顔だ。

≪タダイマノバトル、ショウシャ、キクチアヤカ。ハイシャ、コジマハルナ≫

「え?あやりん…まさか…」
小嶋が愕然とした表情を見せる。菊地がにやりと笑った。
「小嶋さんと刺し違えるなら本望ですよ。さぁ…たかみなさん。
どうぞ引き金を引いてください。」

「にゃんにゃ…」
小嶋が倒れるのと同時に高橋も胸を押さえてその場にうずくまった…
「まさか…チームの誰かがやられると…みーちゃん…みー…」

菊地は高橋と小嶋が動かなくなるのを見届けると静かに立ち上がった。

46.情報


秦と玲奈がPCの前に座っていた。
秦はマウスとキーボードを忙しなく操作している。

「ねぇ…気になる事って?」
「ええ…おかしな事が多すぎます。今に始まった事ではありませんが。
武器を使えるようになる…彼らは…実に巧みに私たちの心理状態を操っています。
このままでは…間違いなく悲惨な殺戮合戦が始まってしまいます。」

「それはそうだけど…でも…PCを使って何を?」
「間違いなく彼らは私たちを監視しています。それに、何らかの方法で通信回路が開かれています。
だから、私たちはあの人たちと会話が出来た…」
玲奈が頷く。
「このPC…何の変哲もない普通のものです。ブラウザも普通に入っている…
どこかで…どうにかしてネットに…よし。ビンゴです。」

画面上に見慣れた画面が立ち上がった
Yahooのトップページだ。

「失踪から10日、生存は絶望視か。」

トップアイドルグループAKB48の主要メンバーを乗せたチャーター機が太平洋上で消息を絶って10日が経った。懸命の捜索の結果、大破した機体が発見されたものの、乗務員とメンバーの行方は依然として不明のままだ。現場海域は比較的安定した天候が続いているものの、潮の流れが早く捜索は難航している。10日という日時からもはや生存は絶望視されている。プロデューサーの秋元康氏は「大変衝撃を受けている。一日でも早くみんなが戻ってくれる事を祈るだけだ。」と悲痛な表情でコメントを発表した。なお、今回被害にあったメンバーで歌唱される予定だった次期シングルの発売を無期限に延期する事が発表されている。

「そういう事ですか…」
秦は関連する記事を次々に表示しながらため息をつく。
「そういう事って?どういう事?」
「私たちは、どうやらもうこの世に居ないと思われているようです。
幾らなんでも殺しあいでもさせるようなこのシチュエーションの設定は野蛮すぎないか…
そう思っていたのですが…」
「だけど…?」
「そう…もう死んでる者だから、誰がどうなっても構わない…
そういう事でしょう。そして、ここで生き残った者が奇跡の生還を果たす…
これ以上ない宣伝効果でしょうね。」

「まさか…秋元先生が…?」
「そうであっても不思議はないって事です。」

「ねぇ…ネット繋がるならメールもできるんじゃない?助けを求めたら…」
「恐らく、情報を取る事は計算済みなのでしょう。
というより、むしろこの情報はどこかのタイミングで私たちにもたらされたはずでしょう…
外部への連絡は出来ないでしょうね…一応SOSは打っておきますが…」

「ねぇ…やっぱり…私たちは…」
「ええ。考え方を変えましょう。
もうみんなで揃って…という考えは捨てたほうがいいでしょうね。
勝ち残らないと…全ては終わりです。」

秦がPCを閉じ立ち上がった。

45.武器



高橋は一人で浜辺を歩いていた。
もう1時間以上は歩いただろうか…行くあてがあったわけではない。
とにかく一人になりたかった。

前田と秋元、そして石田の死は高橋にも衝撃だった。
どこか空想の世界で起こっているような出来事が、
紛れもない現実の世界で起きている事なんだと否が応でも実感させられた気がした。

どうすればいいんだろう…
メンバー全員の事…いや。今私が考えなくてはならないのは、そうじゃないんじゃないか?
私だって死ぬのは怖い。無事生き延びで帰りたい…
それは決して我がままではないはずだ…

そんな気持ちを整理するのに、自分の時間が欲しかった。
思えば、この6年…自分の事だけを考える事があっただろうか…?

その時、高橋のスマホからアラームが鳴った。
無意識に画面を見る。

なんだ…新機能…?ツール…【武器】?武器って…?
必要ポイント30,000って…これじゃ誰でも手が出せるってわけじゃない…

ん?待てよ…
恐らく…いや、間違いなくこの先、ポイントの少ないメンバーは上位のメンバーと組むか…
それか上位のメンバーを倒そうとバトルを仕掛けてくる事になる。
黙っていたらポイントがゼロになってしまう。
ポイントの少ない子は焦ってるに違いないから…
上位者は下位者のバトル申し出から逃げる事が出来ない。
ポイントを守る為に回避したくても狙われたらリスクを抱えなくちゃいけない…

武器…高額な武器…一部の人間にしか使う事の出来ない機能…
そうか…そういう事か。これなら、殺る前に殺れるって意味か。

佐江がいい事を言ってたな。
ここはもう戦場なんだって。

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